2012年09月08日

テスペランサ・ドゥ・ココ08

はぁ、はぁ・・・

こ・こは、どこだ・・・

はぁ、はぁ・・・

なぜ、何も見えない

なぜ、身体が動かないだ

はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・

真っ暗だった視界が徐々に戻ってきた。

目の前に地面・・・?

遠くから俺を呼ぶ声。

リベルト・・・か

近寄る者の足が見える。

「大丈夫か? フリオ!!」
リベルトの顔が視界に入る。

地面に顔を近づけ、覗き込んでいるんだ・・・

お、俺は・・・俺は、やられたのか・・・?

あ、あんな・・・やつに・・・


視界が、ふっと消える。

----------

「ロベルタ、大丈夫なのかフリオは?」
「おそらく・・・命は大丈夫だと思うわ。
 ただ、見たら分かると思うけど、頭部へのダメージは相当なものだわ。
 今、セラが治癒に全力をあげているから、破壊された頭部もなんとかなるでしょう」
「そうか、ひとまずは・・・ほっとしたな」
1人の男が、ベッドで横たわるフリオを心配そうに見ながら続ける。
「フリオの猛攻に対して、相手も突撃。
 ちょうどカウンターとなって、敵の攻撃が炸裂したってことか。
 しかし、フリオがここまでやられるとはな・・・」
「えぇ、ロドリゴ・・・その通りだわ。
 まず通常であれば、フリオのあのスピードについていけないわ。
 うちでも1,2を争う速さよ。
 今までの数限りない戦闘で、誰も対抗できた者はいなかった」
「あぁ、そうだ」
「その上フリオの強靭な装甲障壁(←注1)の上から、これほどのダメージを与えるなんて・・・」
「フリオを上回る、リミッターブレイカーだった・・・ということか」
「その可能性はあるわ。
 フリオ以上に速く動き、フリオ以上の破壊力を有する。
 そんなリミッターブレイカーがついに現れた・・・」
「そうかもしれんな。
 ここは俺達が今まで活動してきた西ユーロではない、中央ユーロだ。
 俺達にとって計り知れない能力者がいてもおかしくはない」
「・・・」
考え込むロベルタ。
「他の可能性も、あるのか? ロベルタ」
ロドリゴが静かに尋ねる。

「お人形さんみたいな、顔をして・・・」
ロベルタがつぶやく。

「あぁ、フリオをやった奴か?」
いぶかしげにロドリゴが聞く。

「えぇ・・・子供の頃、一番大切だった私のお友達。
 彼女、そんな私のお人形さんみたいな顔をしていた」
目を閉じてロベルタが言う。

「あいつらの生き残りに枝を張り、分かったことがある。
 そのお人形さんは、アキアからの遠征隊らしい。
 隣はもう、ランシルバニアだ」
ロドリゴが言う。

「アキアの地・・・
 そして、ランシルバニア・・・」
朦朧とする、ロベルタ。

「大丈夫か、ロベルタ?」

「えっ、えぇ・・・大丈夫・・・」

2人のやりとりに、静かに聞き耳を立てるヴァンガドーラのメンバー達。

ロベルタが語りだす。
「一瞬にして、私のお人形さんに襲いかかったフリオ。
 フリオの攻撃はかわされ、お人形さんの3撃目。
 右フックがフリオのテンプルに炸裂。
 鉄鎧並のフリオの装甲障壁をもろともせず、頭部を破壊。

 その直前には、フリオのモーニングスターをかわし腹部に2撃目、左回し蹴り。
 肋骨数本と全身にかなりの衝撃波。

 そして問題の1撃目。

 フリオの得物モーニングスターに、お人形さんの右フックが炸裂。

 軌道がずれ、ターゲットにヒットせず・・・」

「あぁ、そうだった。
 お人形さんの、尋常ならぬ片鱗はそのあたりから認識していた」

「そう。 私達は全員、そう認識させられた・・・」
「ん?」
ロドリゴが真剣な顔になる。
顔を見合わせる、ヴァンガドーラのメンバー達。

「ここからは、あくまでも仮定の話よ・・・」

「あ、あぁ。 ぜひ続けてくれ」


注1:装甲障壁とは本体を守る薄く強靭なバリア。ちょうど鎧を着ているイメージ。

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2012年09月17日

テスペランサ・ドゥ・ココ09

「フリオの左半身に、広範囲に渡る強いダメージがあるわ」
ロベルタがフリオの左腹部に触れながら言う。
「なに・・・本当か?」
驚いて、セラに確認するロドリゴ。
「はい、かなりの内部損傷があります」
セラがすぐさま応える。
「左側に攻撃を受けたのは、お人形さんからの1撃目。
 フリオのモーニングスターに対するピンポイント攻撃時。
 この攻撃でモーニングスターの軌道がずれ、ターゲットは救われたわ。
 でも、実はこの攻撃はピンポイントではなくフリオの左側面にダメージを与える衝撃派だった」
「ん〜?」
ロドリゴが眉を寄せる。
「この時に、何かを仕掛けられたのかもしれない」
「な、なんだって?!」

目を閉じフリオに触れながら語るロベルタ。

「左でも右でもいいの。
 軸線を8度・・・
 例えば認知座標軸を、左へ8度ずらされたら?

 少し左にいるターゲットが、自分の真ん前にいると思わされたら?」

「そ、そんなことが・・・できるのか?」

「フリオの1撃目。
 モーニングスターは、左上からターゲットに振り下ろされる。
 でもターゲットである感知能力者は、実際にはその場所より8度左にいた。

 フリオの2撃目、右下から左上への攻撃。
 でもターゲットであるお人形さんはもっと左にいた。
 
 フリオの3撃目、お人形さんに全力で突進。
 お人形さんもフリオに突撃。
 2人の間合いは一瞬にして縮まり、いつものようにモーニングスターを振り上げるフリオ。
 でもお人形さんはもっと左にいた。

 そこは、自分の太い腕にもさえぎられ・・・完全に死角となっていた。

 そして、フリオの装甲障壁をも貫く鋭い鉄拳が炸裂。

 いいえ・・・装甲障壁はその部分だけ、中和されたのかもしれない・・・」

「な・・・なんということだ!」
ロドリゴがうめくように言う。

「ま、まさか・・・」
にわかに騒ぎ出すヴァンガドーラのメンバー達。

「す、すごいけど・・・仮定の話なんですよね?」
「仮定の話ではあるけど、ロベルタは・・・予知能力者なんだ。仮説のほどんどが、当たる」
「えっ、本当ですか?!」
「これから我々が体験すること、そして気づくことをも予知する。
 ロドリゴがそういう聞き方をした。
 立ちふさがる異国の計り知れない能力者、その能力は?
 我々が、今気づかなければならないこと、そして将来気づくことは?
 今述べられたことが、この先我々が気づくことだったら?」
新人らしきメンバーの問いに、リベルトが応える。

「ロベルタ、どうして8という数字がでてきたんだ?」
ロドリゴが尋ねる。
「8度という数字は、お人形さんによってフリオの認知座標がずらされた角度よ」
静かにロベルタが答える。
「・・・確定だな!
 全員よく聞け。
 今のはあくまで仮説だ。
 しかし、この仮説をたてたのはロベルタだと言うことも、忘れるな。
 敵は我々の座標軸をずらしてくる。
 攻撃が当たらないと思ったら、座標軸のずれを考えろ!
 装甲障壁は中和される可能性がある。
 敵に攻撃の暇を与えるな。いいな!!」
ロドリゴが叫ぶ。
「おー!!!」
一同に返事するヴァンガドーラ。

「い、今のは? なぜ、確定なんですか?」
「ああやって、予知の確認をするんだ。
 8という数字に関してロベルタが答えられなければ、予知ではなく仮定の話のままかもしれない。
 でもしっかりと答えたとなると、確定された予知だということだ」
「な、なるほど・・・」
面倒見のいいリベルトが新人の質問に快く応えている。


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