2012年04月16日

魔女達の刻 12

「クレスがセイレンに連行されたって?」
ギルド前の居酒屋。
「らしいぜ、サーシャ。今街で小耳にはさんだんだが・・・」
「いつのこと?」
「昨日の夕刻らしい」

<エンプル騎士団の件か? エンプルも必死で容疑者を追っているらしいからな・・・>

「どこへ行く? サーシャ」
一緒に報告を聞いていたワーレンが席を立つサーシャに問う。
「セイレンのところに決まっているでしょう」
「バカを言うな、行ったところで何になる?」
「でも・・・」

「お取り込み中、失礼します」
金髪の女性が、数人を引き連れて現れた。

エルニカ01.jpg

「エルニカ!」
「お久しぶりね、サーシャ」
「こちらこそご無沙汰してるわ、エルニカ」
「オラデアでのミッション以来ね」
「そうね、一年以上たつわ」
「元気だった?」
「えぇ、そちらころ元気そうで。なによりだわ」
「ちょっと問題がおきちゃって・・・早速なんだけど、教えて欲しいことがあるの」
「なに? 改まって」
「おたくのクレッセントはどこにいます? お話がしたいのだけど・・・」

<!エンプルの件か?>

「クレスはここにはいないわ。・・・何?お話って・・・」
サーシャの顔が厳しくなってきた。
「ん〜、気を悪くしないで聞いてくれる?」
「えぇ、わかったわ」
「今朝方、とある貴重な宝石が盗難されたの。私たちが厳重に警備する、その真っ只中から」

<あの件じゃ、ないの?・・・>

「それで、どうしてクレスに?」

<感知能力者もいる。。。動揺するな、心を読まれるぞ>

「その宝石が保管されていた部屋には、正面の入り口からしか入ることができないわ。
 そこには見張りが6人もいたの。壁の裏には4名。誰も賊の侵入を目撃していないわ。
 なのにいきなり警報が鳴った。宝石を台座から外すと、警報が鳴る仕掛けにしてあったの」
サーシャの手招きに従い同じテーブルにつくエルニカ。

<別件?>

「警備兵がとびこんだ時には、金色に輝く女性の残像があったそうなの」
「それが、クレスだと?」
「絶世の美女だったそうよ」

<美女・・・顔を見たのか?>

「絶世の美女と聞いたら、訪れる順番ってものがあるじゃない?
 貴女やクレッセントの所に、真っ先に来るのが礼儀ってものでしょう」
「あら、そうかしら。貴女やクローディッシュのほうが上だと思うけど・・・
 そんなことより、それだけの理由でクレッセントを疑ってるの?
 というか、私ではなくクレスなの?」
「そう、そこなのよ。
 まずこの依頼があったのしても、貴女が受けるとは思えないわ。この依頼は違法な依頼よ。
 何かの理由で受けざるをえなかったとしても、相手が誰なのか調べないわけが無い。
 もし貴女が調べずに侵入してきたとして、警備状況などを見て警備してるのが私たちだと気づく。
 そのままミッションを遂行する?
 必ず脚がつくのよ?」
「そうね・・・その通りだわ。 それでクレスを?」
「サーシャ・・・私達は奪われた宝石の奪取は諦めたわ。
 ただどうしても知りたいの・・・
 見張り一人気づかれず、優秀な感知系の探知をかわし、開かずの間に侵入し、警報が鳴りすぐさま突入した警備兵の前で忽然と消えた。
 そんなことが本当に可能なのか?」
「そんなこと、クレスにだって無理よ・・・それに、あの娘はランクBよ」
「ハンターランクと個人能力は全く別のものよ。
 一致している者が圧倒的に多いのは事実だけど、まったく違う人もいるわ」
「クレスがそうだと?」
「宝石を保管してあった屋敷の端の塔に、鉤爪の跡が残っていたわ、3箇所。
 その賊はたった3箇所の痕跡で塔の上まで登り、隣接する棟の3階まで飛び移っている。
 うちの優秀な感知系がね、そこに残っている残留思念を追っているんだけど
 その賊もかなりできるみたいでね、残留思念が全く残っていないのよ。
 でも感知をジャミングした時の波動が、かすかに残っていたみたいで・・・」

<やはり、エルニカ達の感知能力は抜群ね。現場に行けばそこに誰がいたのかわかるのか?> 

「おそらく・・・クレッセントの波動だろうって」

<クレスが?!・・・なぜそんなところに!!>

----------


エルニカ達が引き上げたあとの酒場。

「あいつら、質問しに来たのにあんなに手の内をしゃべってどういうつもりだ?」
横で聞いていたギルドのメンバーの一人が言う。
「あれでもほんの一部なんだろう」
頭をかきながらワーレンが言う。

「エルニカと一緒にいた者は全員感知系だわ。私たちの動揺や心の中を読むために連れてきてたのよ」
とサーシャ。

「心の中も読めるのか?」
いぶかしげにワーレンが言う。

「髪の長い少し幼そうに見える娘がいたでしょう? 
 ミラって名前なんだけど、相当優秀な感知系らしくて、きっかけさえあれば心の中も読めるそうよ」

「ギルドの幹部であるサーシャと俺がいたから、彼女たちにとっても好都合だったろう」
頭の後ろで手を組みワーレンが言う。

「私たちにとっても好都合だったわ。ワーレンも私もそんな依頼知らなかったし、これで疑いは晴れたわけよね」
両手を仰向けにかざし、サーシャが言う。

「あぁ、しかし誰なんだ?
 エルニカの警備を突破して獲物を盗むなんて・・・俺でも無理だぜ」
ちょっとあきれ顔でワーレンが言う。

「そうね・・・普通は無理よね」

笑いながらサーシャが言う。

<クレス、貴女なの・・・?>


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