ギルド前の居酒屋。
「らしいぜ、サーシャ。今街で小耳にはさんだんだが・・・」
「いつのこと?」
「昨日の夕刻らしい」
<エンプル騎士団の件か? エンプルも必死で容疑者を追っているらしいからな・・・>
「どこへ行く? サーシャ」
一緒に報告を聞いていたワーレンが席を立つサーシャに問う。
「セイレンのところに決まっているでしょう」
「バカを言うな、行ったところで何になる?」
「でも・・・」
「お取り込み中、失礼します」
金髪の女性が、数人を引き連れて現れた。

「エルニカ!」
「お久しぶりね、サーシャ」
「こちらこそご無沙汰してるわ、エルニカ」
「オラデアでのミッション以来ね」
「そうね、一年以上たつわ」
「元気だった?」
「えぇ、そちらころ元気そうで。なによりだわ」
「ちょっと問題がおきちゃって・・・早速なんだけど、教えて欲しいことがあるの」
「なに? 改まって」
「おたくのクレッセントはどこにいます? お話がしたいのだけど・・・」
<!エンプルの件か?>
「クレスはここにはいないわ。・・・何?お話って・・・」
サーシャの顔が厳しくなってきた。
「ん〜、気を悪くしないで聞いてくれる?」
「えぇ、わかったわ」
「今朝方、とある貴重な宝石が盗難されたの。私たちが厳重に警備する、その真っ只中から」
<あの件じゃ、ないの?・・・>
「それで、どうしてクレスに?」
<感知能力者もいる。。。動揺するな、心を読まれるぞ>
「その宝石が保管されていた部屋には、正面の入り口からしか入ることができないわ。
そこには見張りが6人もいたの。壁の裏には4名。誰も賊の侵入を目撃していないわ。
なのにいきなり警報が鳴った。宝石を台座から外すと、警報が鳴る仕掛けにしてあったの」
サーシャの手招きに従い同じテーブルにつくエルニカ。
<別件?>
「警備兵がとびこんだ時には、金色に輝く女性の残像があったそうなの」
「それが、クレスだと?」
「絶世の美女だったそうよ」
<美女・・・顔を見たのか?>
「絶世の美女と聞いたら、訪れる順番ってものがあるじゃない?
貴女やクレッセントの所に、真っ先に来るのが礼儀ってものでしょう」
「あら、そうかしら。貴女やクローディッシュのほうが上だと思うけど・・・
そんなことより、それだけの理由でクレッセントを疑ってるの?
というか、私ではなくクレスなの?」
「そう、そこなのよ。
まずこの依頼があったのしても、貴女が受けるとは思えないわ。この依頼は違法な依頼よ。
何かの理由で受けざるをえなかったとしても、相手が誰なのか調べないわけが無い。
もし貴女が調べずに侵入してきたとして、警備状況などを見て警備してるのが私たちだと気づく。
そのままミッションを遂行する?
必ず脚がつくのよ?」
「そうね・・・その通りだわ。 それでクレスを?」
「サーシャ・・・私達は奪われた宝石の奪取は諦めたわ。
ただどうしても知りたいの・・・
見張り一人気づかれず、優秀な感知系の探知をかわし、開かずの間に侵入し、警報が鳴りすぐさま突入した警備兵の前で忽然と消えた。
そんなことが本当に可能なのか?」
「そんなこと、クレスにだって無理よ・・・それに、あの娘はランクBよ」
「ハンターランクと個人能力は全く別のものよ。
一致している者が圧倒的に多いのは事実だけど、まったく違う人もいるわ」
「クレスがそうだと?」
「宝石を保管してあった屋敷の端の塔に、鉤爪の跡が残っていたわ、3箇所。
その賊はたった3箇所の痕跡で塔の上まで登り、隣接する棟の3階まで飛び移っている。
うちの優秀な感知系がね、そこに残っている残留思念を追っているんだけど
その賊もかなりできるみたいでね、残留思念が全く残っていないのよ。
でも感知をジャミングした時の波動が、かすかに残っていたみたいで・・・」
<やはり、エルニカ達の感知能力は抜群ね。現場に行けばそこに誰がいたのかわかるのか?>
「おそらく・・・クレッセントの波動だろうって」
<クレスが?!・・・なぜそんなところに!!>
----------
エルニカ達が引き上げたあとの酒場。
「あいつら、質問しに来たのにあんなに手の内をしゃべってどういうつもりだ?」
横で聞いていたギルドのメンバーの一人が言う。
「あれでもほんの一部なんだろう」
頭をかきながらワーレンが言う。
「エルニカと一緒にいた者は全員感知系だわ。私たちの動揺や心の中を読むために連れてきてたのよ」
とサーシャ。
「心の中も読めるのか?」
いぶかしげにワーレンが言う。
「髪の長い少し幼そうに見える娘がいたでしょう?
ミラって名前なんだけど、相当優秀な感知系らしくて、きっかけさえあれば心の中も読めるそうよ」
「ギルドの幹部であるサーシャと俺がいたから、彼女たちにとっても好都合だったろう」
頭の後ろで手を組みワーレンが言う。
「私たちにとっても好都合だったわ。ワーレンも私もそんな依頼知らなかったし、これで疑いは晴れたわけよね」
両手を仰向けにかざし、サーシャが言う。
「あぁ、しかし誰なんだ?
エルニカの警備を突破して獲物を盗むなんて・・・俺でも無理だぜ」
ちょっとあきれ顔でワーレンが言う。
「そうね・・・普通は無理よね」
笑いながらサーシャが言う。
<クレス、貴女なの・・・?>
☆Best Site Ranking☆
☆GL Search☆
☆人気のブログ☆
ラベル:レズビアン/百合/ガールズラブ 魔女