エンプル騎士団アキア方面軍駐屯の修道院。
「申し訳ありません、ランディス様。私めの油断から、大変な失態を犯してしまいました」
「検体を奪われたのは痛いな、必ず取り返す!
他の団員の話では犯人は聖教会の戦闘員だったそうだな」
「はっ、服装は聖教会戦闘員だったそうです」
「しかしそんな格好で正々堂々と誘拐を企てるかね、あの聖教会が?
他の4名は女性で仮面をしていたのだろ?」
「はい、仮面をしていましたが確かに女性でした」
「ん〜、ガリアでは無敵だったお前がこの地の初戦で敗れるとはな・・・それも女に」
「申し訳ありません、ランディス様!」
「いや、アインツお前を責めているわけではないんだ。驚いているのだよ。
お前を倒した奴だけじゃない。
ゲノム院自慢のマルドゥーク、あの恐ろしい獣も簡単に倒す奴ら。
空を飛んで逃げたという戦闘員。
それを追って修道院の屋上までジャンプし、疾風のごとく屋根を駆け抜けたという仮面の女。
うわさでは聞き及んでいたが、この地はいったどうなっているのだ?」
「魔女が集いし聖地、魔女の巣窟ランシルバニア・・・アキアの地。
ここには本物の魔女がいる」
一点を見つめながらアインツが言う。
「そう、そのとおりだ。しかし本物の魔女など、存在しない。
魔女そのものが教団の作り上げた方便なのだからな」
こぶしを握りしめながら、ランディスがうなるように言う。
「ラ・ランディス様! めったなことを!」
「あぁ、すまん。お前だけだ・・・
私の祖父が異端として火刑に処されてから、もう何年になるだろう。
教団のために、信者のために身を捧げてきた祖父に
突然教団は火刑を宣告した。
そのときから始まったのだ、魔女狩りも。
いくらエンプル騎士団に嘘偽りの罪状をでっちあげ、拷問で自白を強要し、何百人火刑に処しようとも
それまでの栄光ある騎士団の活躍を知っている人々は、その罪状が偽りであることを知っていた。
当然、大きな反教団運動が起きた。
その矛先をかわすために、
教団は魔女狩りを扇動したのだ。
騎士団を堕落させたのは実は魔女の仕業だった、と
そして、あなたのそばにも魔女がいる。
気をつけないと、あなたも誘惑され地獄に連れ込まれるぞ! っとな
教団のやることは、昔も今をかわりゃしない。
ランシルバニアの地に巣喰う、魔女を殲滅せよだと?
本物の魔女など実在するものか?
もし実在するのなら、我々では勝てんよ!」
感慨深く、ランディスが言う。
「・・・」
何も言わないアインツにランディスがそっと言った。
「アインツ、お前が遭遇したのは・・・本物の魔女だったのか?
そんなわけ、あるまいな・・・」
「私には分かりかねますが、交わす言葉は普通の女性でした」
「・・・うん・・・検体の奪取を第一優先としよう」
「はっ!」
「本物の魔女が実在するのであれば、どうしても検体が必要だ。
対魔女ゲノムのオリジナル候補・・・検体がな」
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「どうしてもここで、感知が途絶えます。
ここで強力なジャミングをかけたとしか思えません」
街中を歩き回る2人。
「ミラ。
貴女の探査を、そうやすやすとかわせる人間がいるの?」
「エルニカ様、私の感知能力などたかが知れています・・・」
「いいえ、私の知る限り貴女の感知能力は
このアキアでも1・2を争うほどよ。
私は貴女無しでは、とてもここまでこれなかったわ。
貴女にはとても感謝しているのよ。
これからも力を貸してね、ミラ」
「は・・・はい、エルニカ様。
もったいないお言葉です」
うれしそうに、ミラが言う。
「それにしても、ミラの探査をかわすなんて・・・
相手も相当な感知能力の持ち主ってことよね」
「はい、感知や探査を逃れるジャミング能力は抜群です。
ターゲットが決まっている以上2・3キロ圏内なら必ず探知できるはずなんですが、全く感知できません。
これだけ動き回って探知できないってことは、強力なジャミングで私の感知を逃れているとしか考えられません」
困惑したような表情のミラ。
「うん、その上・・・ジャミング波動まで消しているとはね・・・」
「そうです。相手がジャミングを使えば、またそれが感知の対象になるんですが、それすら感知できません。
あの日あの時塔に残っていたジャミング波動と、街でたまたま見つけた残留思念だけ・・・
もしかしたらターゲットは・・・
私自身のジャミングを感知して私から遠ざかっているのかもしれません」
「そうね・・・これでランクBですって?
ミラが探査できないっていうだけで、感知能力でいえばSランクものよね」
微笑みながらエルニカが言う。
「はい、感知能力だけで言えば強敵です」
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