2012年04月24日

ベイムート伯爵の怨念02

地下のカタコンベ。
たいまつをもって進むリングホルン隊。
薄暗い通路がどこまでも続く。
もうどれほど歩いたか。

依頼のあった修道院近くのカタコンベ。
失敗した12組のハンターチームのうち8組が、ここで遭難しているそうだ。

クレッセントの脚が止まる。
右前方の暗闇に集中。
「最大防御! 2時方向!!」
クレッセントが大声で叫ぶ。
「なに?!」
素早く反応する、リングホルン。

ドーーーン!!
という音と共に、目の前が真っ暗になった。

あっ、落ちる! 
足元の地面が無くなり落ちる!
「うぅっ! わぁぁぁぁぁぁ!!」
奈落の底に落ちていく!
「精神攻撃よっ! 気を確かに保って!」
さらにクレッセントが叫んだ。
<精神攻撃? こ、これが精神攻撃だと・・・こんな強烈な攻撃、初めてだ!
 まるで現実。異空間に連れ込まれたんじゃないのか!!>
<幻覚ですって? 本当にこれが、幻覚なの?>
特Aランクのリングホルン、ベジネイトはまだ冷静な思考ができたが、他は放心状態だ。
「局所防御! 物理攻撃よ、正面2時!!」
<クレスの叫び声だけが聞こえる・・・周りは?>
うっすらと見えてくる。
自分を含めて全員暗闇の中で倒れるか、膝まづいてる。
リングホルンの目の前で、非現実的な光景がスローモーションで展開する。
<右正面から閃光。
 リコを狙っている。
 あ、危ない、リコ!!
 だ、だめだ!・・・動けない!!>
暗闇の中、唯一動いているクレッセントが鉄扇でその閃光を跳ね返す。
第2射、ターゲットは後衛のアンリだ!
「アンリ!
 逃げて、アンリ!!」
ベジネイトが叫ぶ。
アンリが、迫り来る閃光に気づく。
が、右手を上げるだけで、何もできない。
襲いかかる閃光。
<・・・もうだめ!>

バチーンッ!!
直前でクレッセントの鉄扇が閃光を弾いた。

アンリの瞳がクレッセントを追う。
「リンガ!」
クレッセントの両手が鋭く開く。
リンガ10閃、弧を描く。

第3射、4射がメンバーを襲う。
リンガがそれを叩き落す。
2時方向、残りのリンガが一気に反撃。
クレッセントが同じく2時方向に跳ぶ。

ガギーン!
鈍い金属音。

一気に視界が戻った。
たいまつの灯りがまわりを照らし出す。

もといた場所、カタコンベだ。
さっきより全体が黒く、焼け焦げた臭いがする。
閃光を受けた跡なのか、クレッセントが弾いた先が何箇所も黒焦げになっていた。

正面右の暗闇から、ヒールの音が響く。

クレッセントが鉄扇を右手に肩を軽くたたきながら歩いてくる。
回りを注意深く観察しながらも、涼しい顔で戻ってきた。

無傷の上に、その白き衣装にも一点の汚れも無い。

アンリが羨望の眼差しでクレッセントを見上げる。

リコとイジルが軽い火傷を負った。

----------

「クレス、ありがとう。貴女は私の命の恩人よ。本当にありがとう」
「いいえアンリ、貴女だって逆の立場だったら私を助けてくれたはずよ。おあいこよ」
「なにそれ?全然おあいこじゃないじゃん?貴女はやっぱりとっても素敵な人よ。私の憧れのクレッセントだわ。もう辛抱たまらん^^」
アンリがクレッセントに抱きつく。
「きゃ〜、恥ずかしいわ」
「その気になってきたぁ?」
「ふふん、いつでもお相手するわよ〜。アンリだったら♪」
「うわっ、鼻血ぶ〜っ!」
2人の会話を聞いていたリコが口を挟む。
「リコ。いいところなんだから、ちゃちゃいれないでよ!」
「クレス、俺も礼を言わせてくれ。ありがとう、本当に助かったよ。今こうしていられるのもクレスのおかげだ。
 現場に残っていた黒焦げの太い槍を見ただろう。あんなものに貫かれていたら、一巻の終わりだった。
 おまけに着弾とともに爆発する仕掛けになっていたなんて・・・」
「火の属性を限界まで貯めてから、投擲してきたんでしょうね。それも正確に。
 クレスさん、僕からも心からお礼を言わせてください。
 貴女がリンガで弾いてくれなかったら、僕はあの太い槍に貫かれ、そして粉々に消し飛んでいました。
 あの時は一瞬の出来事でしたが、今考えれば考えるほど恐ろしい。震えがとまらない」
「敵の策にのる必要はないわ。
 わざわざあんな太い槍で攻撃してきた理由、それは私たちに恐怖心を植え付けるため。
 人1人なら炎を貯めた矢かダガーで十分なはずよ」
「そう・・・なんだけど。この震えは、なかなか止まらない」
にっこりと微笑みかけるクレッセント。
「それはそうと、クレス。どうしても聞きたいことがあるんだ、教えてくれないか?」
「なによ、リコ。改まって?」
アンリがからかい半分に言う、私のクレスにちょっかい出さないでって目をしている。
「なぜ、クレスだけが敵のマインドコントロールに落ちかなったのか?
 バカみたいな質問で申し訳ないんだが、俺の不注意だったってことは十分わかっているんだが・・・
 どうしても聞きたいんだ、今後の勉強のためにも。俺とクレスとではあの時、何が違っていたのかを」
「私も、私も教えて欲しいわ・・・スキルの違いだと思うなら、そう言って」
アンリもリコに続いて言う。
「私はあの時、たまたま正面右の暗闇を見ていたの。たいまつの灯りが通らないその空間がとても気になって。
 ずっと見つめていたわ・・・何かがいるような気がして。
 そして確信したわ、敵だと。
 叫ぶと同時に防御結界を張ったの。
 まず精神防御、それから物理防御」
「なぜ、精神防御を先にしたんですか?」とイジル。
「私は結構好きでオカルト事案を受けることが多いんだけど、オカルト系は精神攻撃が圧倒的に多いわ。
 だから、とっさのとき精神防御、物理防御の順でかける習慣になっているのね。
 それに、物理攻撃より精神攻撃のほうが先にこちらに届くわ」
「な・る・ほ・ど、そうなのか! 有難うクレス、すごくためになったぜ」
「あともう一つ、とても重要なことがあるわ。精神攻撃には必ずその次の罠があるの」
「なんでも教えて。私は精神攻撃ってはじめてなの」とアンリが言う。
「僕だって初めてなんです。どう対処していいのかわからないんで、教えてください」
「精神攻撃に落ちたと思ったら、下手に動き回ってはダメよ。
 敵からの攻撃はできるだけ最初いた場所からあまり動かないように防御して。
 右、右、右とかわしていくと、その先に落とし穴があるわ。
 かわすときは右、左、右とかわすの。もしくは円を描くように。
 それから、敵からの攻撃に反撃してはだめよ。
 反撃すると、味方に攻撃することになりかねないわ。
 精神攻撃に落ちたと判断したら、絶対に大きく動いたり、反撃してはだめ」

<精神攻撃は、罠への誘導ってことか・・・さすがサーシャの秘蔵っ子だ>
クレスたちの会話からちょっと離れたところに、リングホルンがいた。


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