2012年06月14日

ベイムート伯爵の怨念21

左、左、左、下、右、左・・・

<仕込み杖の中身は
 レイピアか・・・当然ね>

ル・ボーンの華麗なるステップから
レイピアが息をつく間もなく繰り出される。

<さすがに速い!>

サーベルと鉄扇でそれをかわしながら
クレッセントが舞う。

<ない・・・>

「ほぉ、お嬢さんもなかなかの腕のようですね。
 さすがダキア有数のギルド、デフィエルデルワーレのハンターさんってことかな?」

<礼拝堂にあったあの異物が・・・今は、ない>

「よくぞこの突きをしのいでいる、そのサーベルで」
間合いをとりながら、ル・ボーンが挑発するようにクレッセントの周りを回る。

<結界が張ってあるわ。感知ジャミングね。
 結界内の探知全てを妨害しているわ。
 それと・・・、トラップ?>

「そんな重いサーベルでは、そろそろ右手も疲れてきたんじゃないですか?」

<ル・ボーンが剣術だけで挑んできているのがその証拠。
 そのうえ間合いを3メートル以上取りたがっている・・・トラップは範囲攻撃?>

ル・ボーンの強烈な突き!

ひらりと横にかわしクレッセントがサーベルを打ち込む。

<くっ! 俺も以前サーベルを極めたことがあるから、よくわかる。
 こいつ、女だてらに相当な腕前だ!>

クレッセントの連撃!

かわすル・ボーン。

<鍔のないこの仕込みレイピアでは、
 この女の打ち込みを防御することができない!
 かわすのみか・・・>

軽やかにステップを踏み、反撃のチャンスをうかがうル・ボーン。

クレッセントの打ち込み!

<我々の剣術とは違う・・・
 この鋭い打ち込みの後、さらに踏み込み下から切り上げてくる!>

クレッセントの左下からの斬撃!

なんとかかわす。

<そして、横薙ぎ!>

ル・ボーンが身を低くして下へかかわす。

<ここだ!!>

ル・ボーンの渾身の突き!

「これで、終わりだ・・ぐぁっ!!!」

後ろへ吹っ飛ぶ、ル・ボーン。
みごとにクレッセントの蹴りが、顎に炸裂!

どーーーんっ!

後頭部から床に激突。

「これは何事ですか?」
オーランド神父の声。
神父と2人の修道士がいた。
服装からして2人とも退魔団員だ。

「オーランド神父・・・」
「また、貴女ですか。お嬢さん?」
「ええ、探し物があって」
「ほう、貴女がお探しの物とは、・・・これですか?」

オーランド神父が宝玉手にとり見せる。

<これだ。異物だ!>

「そう、それよ」
クレッセントがにっこりと微笑む。
「・・・どこまで知っている?」
オーランド神父がル・ボーンを見る。
「大切な者が捕らわれていると、言ってました」
ル・ボーンが頭を振り、立ち上がりながら言う。
あれだけ強い蹴りをくらっておきながら、相当強靭な身体だ。

「なに?」
少し驚いた顔をしながら、顔の前に宝玉を掲げるオーランド神父。

「確かに・・・この宝玉にはベイムート伯爵のご令嬢の魂が封印されている」
オーランドが不敵な笑顔で言った。

<な、なんですって!>

「伯爵の、ご令嬢・・・」
クレッセントがつぶやく。

「火炙りになり、そのまま黄泉の世界へと消え行く彼女の魂を
 我らが英雄ランティモア・セイエスがこの宝珠に封印したのです」
「ランティモア・セイエス・・・教団最強と謳われる退魔士ね」
「よくご存知ですね。彼が、村人たちによって火刑にされたベイムート伯爵のご令嬢の魂を守ったのです」
「よく言うわ。人が人を焼くなどと、そんな残虐なことができるのは、貴方たち教団の人間だけよ。
 どうせ村人達を煽って、彼女を火刑にしたのでしょう?」
「ほぉ、これはこれは大胆なご意見ですね。
 我々の言葉を信じず、我々の教義に異を唱えるものは・・・
 異端として処刑せねばなりませんね」

<最初からそのつもりのくせに>

「ベイムート伯爵!
 にっくき敵がまた貴方のご令嬢を亡き者にしようと襲い掛かってきましたぞ!
 今こそ貴方の力で罪深き暗殺者に粛清を!!」

目の前にふっともやもやが現れたかと思うと、半透明な白い物体に変わっていく。

「出たな、ベイムート伯爵」

いきなり白い影から10数本のトゲのような触手が襲い掛かる。

ひらりとかわすクレッセント。

破壊された床が飛び散る。

<ベイムート伯にはリンガが有効。トラップも発動しない>

左手にリンガをかまえる。

<リンガ、ベイムート伯を! 追撃!>

ベイムート伯爵からの2撃目をかわし、リンガを放つ。

<オーランドもおそらくはSランク、次元空間に逃げ込む可能性がある>

右手のリンガが放たれる。

<目標オーランド! 次元空間まで追撃しろ!>

リンガ5閃、白い物体に襲い掛かる。
3つはす通り、残り2つがベイムート伯爵の直前で消えた。
空間を越えて追撃!

「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜!!!」
まさに地獄からの咆哮。

オーランド神父の顔色が変わる。
「べ、ベイムート伯! 大丈夫か?
 お・の・れ・小娘ぇ!」

リンガがオーランド神父を襲う。
「この円月輪をなんとかしろぉ!」

ル・ボーンと2人の退魔団員が神父の前に立ちはだかり
リンガをなんとか仕込み杖で弾く。

<一気に間合いを詰めて!>

目の前にル・ボーン。

<眠れ!>

クレッセントの右回し蹴りがル・ボーンの左頭部に炸裂。

「ぐぉっ!!」
なんとか左腕でかばい直撃を避けるも、ふっ飛ぶル・ボーン。

そのまま回転し、左裏回し蹴り。
退魔団の1人に炸裂。

「そこまでだ! この娘がどうなってもいいのか?」
別の退魔団の1人がニナの首に短剣をあて、人質にとっていた。
「ニナ!」
心配そうにクレッセントが叫ぶ。
「すいません、クレス・・・」
ニナがすまなそうにクレッセントに謝る。
「ふっ、円月輪をしまって大人しくしてもらおうか。お嬢さん」
勝ち誇ったようにオーランド神父が言う。
「くっ!」
リンガがクレッセントの手に戻る。

「たいしたものだな、その円月輪は。自由に操作できるのか。
 別空間にも飛ばせるようだしな・・・」
オーランド神父がさも感心したように言う。
「だが、ここまでだ」
今まで欠かさずたたえていた笑みが消えた。

「殺れ! ベイムート伯爵!!」

----------

「毒塗りの仕込み杖か?」
サーベルをかまえるリングホルン。
「ご明察通り。傷1つで身体がしびれ、死に至る。降参するなら今ですよ」

集会場の外には数人の修道士が待ち構えていた。

「降参する気なら・・・」
リングホルンがうなる。
「ここには来ない!!」
声を揃えて全員が叫んだ。

「俺たちギルドの掛け声の1つさ^^」
からかったような口調でリングホルンが言う。

「では、お手並み拝見といきましょうか!」
修道士の1人がリングホルンに切りかかる。
「くっ!」
フェイントだ、すかさず強烈な突き!

なんとかかわすリングホルン。

息をつくまもなく鋭い突きの連撃。
サーベルを細かく動かし防ぐリングホルン。
「うぐっ!」
リングホルンの左肩口に修道士のレイピアが刺さった。

「リングホルン!」
他の修道士と対峙していたリコとベジネイトが叫ぶ。
駆け寄ろうとするリコの前に修道士が立ち塞がった。
「おっと、貴方のお相手は私ですよ」
同じく駆け寄るイジルの前にも別の修道士が立ち塞がる。


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