礼拝堂の正面扉が突然開いた。
こちらからはちょうど逆光になってて見にくかったが
目が慣れ、徐々に確認できるようになってきた。
<!>
「シ、シスターマティアス!」
クレッセントが思わず叫ぶ。
「これは、これは、ごゆっくりなご登場ですね。シスターマティアス」
オーランド神父が皮肉っぽく語りかける。
<ま、まずいわ・・・ベイムートとオーランドだけでも手いっぱいなのに
この上マティアスまで出てきては、とても勝ち目はないわ・・・>
マティアスにミディア、ルテアそして数人のシスターが礼拝堂の中に入ってきた。
<なんとか隙を見つけてニナを奪還し、逃げなければ・・・>
周りを見渡すクレッセント。
「シスターマティアス、貴女の獲物ですが
きちんと管理しておいてもらわないと
こちらで処分いたしますよ・・・
ベイムート伯、何をしている、さっさと殺らんか!」
天使の笑顔のまま、マティアスの右手が上がる。
あたり一面に異様な波動が高まる。
<な、なに?
このパワーは!>
緊張が走る。
<来る! 最大防御!! と、とにかくよけるんだっ!!!>
にこっと微笑みながら、右手が下がる。
ど、どぉぉぉーーーんっ!!!
目もくらむ閃光。
耳が潰れるほどの轟音。
全身を襲う強烈な衝撃と激痛。
意識が飛びそうになる。
「うぉぉぉぉぉっ!!!」
オーランド神父の咆哮。
ぷすぷすと音を立てながら、真っ黒に焦げている。
周りの退魔団員もル・ボーン以外は焼けたただれ床に倒れていた。
礼拝堂各所に小さなスパークが起きている。
<ト・トールハンマー、雷撃か!> ←注1
ベイムート伯爵は身体のいたるところにスパークを起こしながら
床の上をのたうつように転がっている。
<これが雷撃・・・初めて見たわ。SS級と言われる幻の技>
ル・ボーンも片膝を立て、苦しそうに頭を両手でかかえこんでいる。
焦げながらも、なんとか命はとりとめたようだ。
<ニナは?>
人質にされていた場所から少し離れたところで、ルテアの腕の中にいた。
傷1つ負っていない。
<あのすさまじい雷撃の中・・・
ルテア、貴女が助けてくれたの?>
「お、お・の・れぇ・・・裏切ったか、マティアス!!!」
あれほどの雷撃を受けながら、まだ立っているオーランド神父が叫ぶ。
「先に約束を破ったのは、貴方よ。オーランド」
「なに?」
「私の獲物には手をださないって、約束だったでしょう?」
「貴様の淫乱な趣味には、つきあいきれんわ!」
「私の高尚な趣味を貴方が理解できるとは思えないし、理解してもらおうとも思わないわ♪」
天使の微笑みのままシスターマティアスが言う。
「同盟は決裂だ! これでも食らえ、異端者ども!!」
オーランド神父の強烈な精神攻撃だ。
目の前が真っ暗になる。
<い、意識が・・・とぶ・・・>
床が消え、落下する。
<やはりオーランドはSSランクの感知能力者・・・防ぎきれない!>
奈落へ引きずり込まれる。
突然、一条の光が差し込んだ。
さぁっと、眼前が明るくなる。
<ルテアのジャミングだ!>
視界が戻ってくる。
ドオォォォォーンッ!!
オーランド神父の周囲が爆発した。
<ミディアの攻撃?>
バリアを張ってなんとかしのぐオーランド神父。
「くっ、トラップはどうなっている!」
オーランド神父が苦し紛れに叫ぶ。
「トラップは私が解除したわ」
ルテアが平然と言ってのけた。
「バカなぁ・・・こ、こんな短時間で解除できるような代物じゃないぞ!」
「ちょっと時間かかっちゃったけど♪」
「ダブルSの私が仕掛けたトラップだぞ、解除できるものかぁ!!!」
「ふふ〜ん、もうどんな能力を使おうがトラップは発動しないわよ♪」
ルテアがからかうように唇をとがらせて言う。
「あとは、自由に能力を発揮して、全力で戦えるわよぉ〜」
「貴様も感知系か?
・・・それも私をも凌ぐ能力者ってことか?」
オーランド神父が改めてルテアの能力に驚嘆する。
「こいつら、この容姿とあの破廉恥な趣味にだまされるが・・・相当な達人ぞろいってことか」
ルテアだけでなく、この聖教会のシスター達の実力に戦慄するオーランド神父。
「いつまで転がっている、ベイムート伯!」
オーランド神父が叫ぶ。
「くそっ! ダメージは私よりベイムートのほうが大きかったか?」
苦しそうに地をはう白い影、ベイムート伯爵。
礼拝堂のドアから廊下へ転がり出る。
<逃すか、ベイムート!・・・しかし、ニナは?>
『追いなさい、ベイムートを。
私達の狙いは貴女だから・・・この娘の生命は保証するわ』
ルテア?
心に語りかけてくる。
さっきの雷撃のときも、その瞬間に跳ぶように言われた。
<今は信じるしかないか・・・
どの道、マティアス達と戦っても勝ち目はないし
オーランドと仲違いした、この状況を利用するしかない!>
ルテアとニナに目配せしてから、ベイムート伯爵を追う。
<一気に駆け抜けろ!>
長い廊下を風のごとく走る。
<こんなに・・・長いのか?>
いつまでも続く廊下。
やっと廊下の先のドアにたどり着いた。
<ベイムート伯爵がいない、外か?>
ドアを開ける。
いきなりまぶしい太陽が照りつける。
教会の中庭?
数人の人影がある。
花壇の花の世話をしているのか、女性達が楽しそうに会話をしている。
<教会に、一般の人もいたのか>
「すいません、今ここに白い影のようなものが来ませんでしたか?」
1人の女性に話しかける。
振り向いた女性が親しそうに返事をした。
「あら、リンダストリア。どうしたのこんなところで?」
「えっ・・・?」
注1:雷撃とは本来、魚雷による攻撃のこと。ここでは雷による攻撃。
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