2012年07月27日

ベイムート伯爵の怨念24

森を走り抜ける、リンダストリアとハイデル。
かなり走ったところで、呼吸を整え背後を振り返る。

空に立ち上る、真っ黒な煙。

「村が、村が、燃えているわ!」
「な、なに! ま・さ・か・・・」
呆然と立ち尽くす2人。

----------

「異端を、助ける者もまた異端!
 この村は異端の村だ、皆殺しにしろ!!」

「これはどういうことだ? すぐにでもやめさせろ!」
「マジャル槍騎兵の隊長殿。あなた方精鋭部隊の力を借りずともほらこの通り、異端の村は跡形も無く焼き払いますよ」
「バカな! 修道士が何の権限でここまでする? 直ちにやめさせろ!」
「私は教団より異端追討の命を受けてここにいるのですよ。
 異端を見つけ次第焼くように命じられております。
 村は燃やせ!
 女子供も捉えて、焼け!!」
「な、なんと愚かな!
 やめさせろ!
 民兵どもを拘束しろ!!」

----------

「ハイデル、お願いハイデルを助けて!
 あんなに血を流していたら死んじゃうわ!
 お願い、ハイデルを助けて!!」
燃え盛る炎の中、中央広場に引き立てられていくリンダストリア。
「異端撲滅官殿、魔女はこのとおり私が捕らえて参りました!」
「よし、良くやった!
 君の活躍に主もお喜びであろう。
 その魔女はすぐに火炙りにしろ!」
広場では既に数人の女性が焼かれている。
泣き叫ぶ声に悲鳴。
薪の量が極端に少ない。
少しでも長く受刑者が苦しむように
足だけを重点的に焼く、脚焦がしの刑だ。
煙の量も押えられ、煙での失神や窒息させることなく
死に行く者を徹底的に苦しめる最も残虐な刑の1つだ。

----------

「なんと言うことだ!」
燃え盛る村へ入っていく数人の修道士達。
娘達が処刑されている広場まで走ってきた。
「やめろ! 火を消せ! お前達は何を勝手なことをしている!」
「これは、これは、退魔団の皆様ごゆっくりなお着きで。異端と魔女を火炙りにしているところですよ」
「異端も魔女も正式な審問を経てから、刑は執行されなければならない。勝手なことをするな!!」
「私は異端撲滅の為に任命された異端撲滅官ですよ」
「勝手な役職を名乗るな! 異端撲滅官など聞いたこともないぞ!!」
焼かれていく娘たちの前で押し問答をする修道士達。
1人の修道士がリンダストリアを見つけ駆け寄る。
「リンダストリア!」
「お・・・おじさん・・・」
「な、何故こんなことに? 何故、力を使わなかった?」
もう、口を開くこともできなくなったリンダストリアが修道士の心に語りかける。
<私のせいで、私の力のせいで、お父さんもお母さんも、そしてお姉さんも国を追われた。
 お姉さん・・・お姉さんは私の身代わりのように彼らに捕まり火炙りにされたわ。
 この村の人達もそう、私のせいで焼かれ、殺されていく。
 この力は使ってはいけないものなの、回りの人をみんな不幸にしていくわ>
「リンダストリア!」
<最後におじさんに会えて良かった。いつも優しかったおじさん、本当にありがとう>
「リンダストリア! なぜお前が・・・なんの罪もないお前が、なぜこんなめにあわなければならない!」
<お父さんに、会ったら・・・伝えて・・・>
「何を言っているリンダ、お前のお父さんはもう・・・」
<リンダは、あなたの娘に・・・生まれて、しあわせ・・・で・・・し・・・>
「おぉぉぉ、主よ! この心優しいうら若き娘に、なぜこのような過酷な試練を・・・」
燃え盛る柱の前でひざまずき泣き叫ぶ修道士。
「おっ! このままではリンダストリアは天に行けない! なんとか魂だけでも封印し、後日・・・」

修道士が行ったのは、退魔の封印術。

-----------

<お父さん、お母さん、今までありがとう。とっても迷惑をかけて本当にごめんなさい。
 心から愛していました。会って直接、言いたかったけど、そうもいかないみたい・・・>

「リンダストリアー!!!」
涙を流しながら娘の名を叫ぶベイムート伯爵。

何十本という黒焦げの柱が立ち並ぶ広場。

子供たちの悲鳴が聞こえる。
大きな穴を掘り、薪を入れ、火を炊いた。
今は、火の勢いが収まり、高温の炭状態になっている。
そこに後ろ手に縛り上げた子供たちを投げ込んでいるのだ。
「パパ ママ〜><」
今、ほんの幼い少女が投げ入れられた。
真っ赤になった薪を上をのたうつ少女。
なんとか立ち上がり穴の斜面をはいあがろうとする。
しかし脚だけでは登れず、又高温の薪の上に落ちる。
少女の泣き叫び、転がりまくる姿を見て、手をたたいて笑う異端撲滅官と民兵達。

ベイムート伯爵の怒りが爆発。

天の果てまでとどろく咆哮。

一瞬にして消し飛ぶ民兵達。

----------

燃え落ちる村を背に、ベイムート伯爵となんとか助け出した子供たちが数人。

眼前には何百、何千という騎馬軍団。

右側から押し寄せ、中央でカーブしてこちらに突進してくる。
全騎がみごとに斜めになり、なんと壮麗な光景か。

ユーロ最強と言われるマジャルの槍騎兵団だ!

「突撃!」
マジャルの突撃ホルンが大地に響き渡る。

「いかなる魔道、いかなる魔力を使おうとも、我らマジャルの槍騎兵に恐れるものはない!」
幻想的なホルンの音色と真っ赤な夕日を背景に、大陸屈指の勇士達が攻め寄せる。

「怖るるは、このまま悪魔を放置し、我らが愛する者を奪われることだ! 勇者達よ進めーっ!」
一糸乱れぬマジャルの槍騎兵が砂煙をあげて突撃してくる。

子供たちを後ろに下げたベイムート伯爵の右手が上がる。


そして

目もくらむ閃光!


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