2012年08月28日

テスペランサ・ドゥ・ココ02

「どうぞ、こちらへ」
「あぁ、すまないな」

荘厳な佇まいのアラド大聖堂。
光が放射状に差し込み、聖堂内部の金箔が光り出す。
賛美歌が響き渡り、この世の神秘をかもしだす。

赤い絨毯の廊下。
正面から白い鎧の騎士が歩いてくる。
「こ、これは・・・、ル・ボーン殿!」
ナイトがル・ボーンに歩み寄る。
「おっ? ヘイラーか!
 なんと、そのエンブレムは第3聖騎士団。
 それも団長だな?」
「身に余る大役を仰せつかり身も心も引き締まる思いです。
 これも師匠より心と技と体を鍛えてもらったおかげでございます」
「はっはっは! 俺は何もしちゃいない。君が努力と真心で勝ち取ったんだ。
 よく頑張ったな、ヘイラー。お前は俺の自慢の弟子だ。
 でも、これだけは忘れるな!
 何があっても生き残れよ!!」
「はっ! 肝に銘じます。師匠」

ル・ボーンが来たと聞いて、ぞろぞろつめかける教団関係者達。

「これは、ル・ボーン殿。お初にお目にかかれて光栄です。
 私はこの教区の担当を命じられておりますビルツと申します。 以後ぜひお見知りおきを」
深々と頭を下げる司教。
「あっ、あぁっ、と・とんでもない司教様。
 御冗談はおやめください。
 私は一介の修道士ですよ」
「何をおっしゃる、貴方こそが我らの心の支え。
 主の導きに異をとなえる者達に
 正義の鉄槌を加える我らが勇者。
 今後とも、父と子をお守りください」

----------

「あぁ? どうなってんだ?
 騎士団は同じ武闘派として納得がいくとしても
 司祭だけでなく、司教様までが
 俺に頭を下げに来たぞ」
「前回の戦役の功労でしょうかね?」
「ん〜〜〜、ちょっと大げさに吹聴しすぎたかな^^」

「主だった者のご紹介は全て終わりました。
 後はこの部屋のみです。
 どうぞ・・・」
マリノ神父がル・ボーンを丁寧に案内する。

開けっ放しの扉から中を覗いた。

「うっ、うわっ!」
思わず後ろへ飛び退くル・ボーン。
「な、なぜ?
 なぁんで、あのじゃじゃ馬娘がここにいる?!」
「だ、だれですか?」
「あいつだ、デフィエルデルワーレのクレッセントだ。
 奴はアキアにいるはずだ、なぜこのアラドにいる?」
マリノ神父が急いで書類をめくる。
「彼女は・・・今回、護衛として参加しております。
 正式には、ギルド連合より選抜されたミラという感知者の世話係となっております。」
「護衛だと・・・」
「えぇ。 ハンターランクは・・・Bです」
「び、Bぃ? はぁっ?
 は、はっはっはっ!
 それは、それは、正しい判断だ!
 あのような不敬者、Bでももったいないわ!」

「さっ、どうぞ。こちらへ」
ミーティングルームへ案内しようとするマリノ神父。
「い、いやっ・・・ちょっと、ここはやめておきます・・・」
あたふたするル・ボーン。
「ん?」
「い、いや、特に意味はないのですが・・・ちょっと体調が」
「おぉぉ、それはまずい。 こちらへどうぞ」

ミーティングが終了したようで、去る間もなく参加メンバーがどんどん部屋から出てきた。

「おっ! ル、ル・ボーン殿!!」
「わぁっ!」
そそくさと離れるつもりが、
声をかけられ、とまどうル・ボーン。
「お久しぶりです。いつ、こちらへ?」
「あ、いや・・・今来たばかりでね」
「ミッションに参加されるのですか?」
「あぁ、まぁそのオブザーバーというか助言役としてだがね・・・」
「これは心強い。よく来てくださいました、師匠!」
「師匠、ご無沙汰しております。お元気でしたか?」
ル・ボーンの周りに一気に人だかりができる。

「あらっ?」
ぞっとして思わず
ル・ボーンが声の方向を見る。
<し・しまった!>

「カーディナル・ル・ボーン。 おひさしぶりです」
クレッセントが膝を少し折り、わざとらしく敬意の礼をとる。

<くっ、クレッセント・・・>

「カ・・・カーディナル(枢機卿)だと?」 ←注1

<こいつぅ!>

「枢機卿?」
「な、なんですと?」
顔を見合わせる教団関係者達。
「これはこれは、あのときの元気なお嬢さん。その後もお元気でしたか?」
平静を保とうとするル・ボーン。
「えぇ、元気にしておりましたわ。カーディナル♪」
「あ、あの・・・お嬢さん、私はカーディナルではありませんよ。 だだの修道士です。」
ル・ボーンがあわてて言う。
「あらっ? そうおっしゃってませんでしたか?」
と言って、ル・ボーンに近寄り
「また、ご一緒させてもらうことになるんですか?
 今回は、お・尻・・・
 触らないでね、カーディナル♪」
ちょっといたずら顔で
さらに付け足すクレッセント。

「な・・・なにぃ?」
動揺するル・ボーン。

「お、お尻?」
ジュネスがル・ボーンをにらみながら言う。

「う、うそだぞ!」
なんとか冷静を装うル・ボーン。

「なんですと? お尻?」
「え〜っ、お尻?」
ウエルが大声で言う。

「ル・ボーン殿?」
「これは、いったい?」

「う、うそだってば・・・」
冷静を装えなくなってきてるル・ボーン。

「まっ、カーディナル! 若いお嬢さんのお尻・・・絶対さわらないでくださいよ!」

とどめに、年配の修道女からクギをさされるル・ボーン。


<く・くっそう、クレッセントめぇ・・・>

一人、両手を握り締めるル・ボーン。



注1:カーディナルとは教皇に次ぐ教団で2番目の位、枢機卿。


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