2012年08月28日

テスペランサ・ドゥ・ココ04

燃える、燃える。

全てが、燃える。

灼熱の大地に肉が焼かれ、血が沸騰蒸発する。
そして一帯に充満するこの匂い。

この時代の人間になら、もうすでに慣れきった匂いかもしれない。

悲鳴と狂乱が錯綜する。

丘の上に古びた教会。
その下の平地で、壮絶な戦闘が展開されていた。

「なぜだ? ギルドからの護衛を待ってから、事にあたれと言ったはずだぞ!」
ル・ボーンが部下に問いただす。
「それが、サンミゲル修道会がヴァンガドーラを発見。
 気づかれぬよう監視しておりましたが、発覚。
 敵からの攻撃を受け、やむを得ず応戦。
 第3聖騎士団がサンミゲルの修道士救援の為にこの地に駆けつけ、そのまま戦闘に突入。
 その報を受けた連合騎兵団も突撃を開始しました!」

「突発事故か?!」

「はい、防ぎようもありませんでした」
「火を放ったのは?」
「ヴァンガドーラです。いきなり大地を焼き払いました。修道会には大きな被害がでています」
「くそ! いいか、どんなことが起きようとも、ギルドから召集された感知者を守りぬけ!」
ル・ボーンが配下の退魔団員に命令する。
「それが我々の使命だ! 主もご照覧ある、我らの勇気と信仰をお見せしろ!!」
「おぉぉ!!」
「わかりました! 団長!!」

退魔団の掛け声を聞き、感知者部隊のリーダーが叫ぶ。
「退魔団と、連合騎兵団第3部隊が我々を守ってくれる。存分にその能力を発揮してほしい!
 敵感知能力者を全力で探知せよ。探知後は逐一前線の聖騎士団、連合騎兵団に報告!
 全員、ただちに持ち場に着け!」
「はい!」
ミラ達招集された感知能力者が、それぞれの持ち場へと散っていく。
護衛の為、追随する連合騎兵団と退魔団。

----------

ミラ護衛の依頼をエルニカから受けたあと、すぐにクローディッシュがカンナを連れて来た。

雲1つない紺碧の空、暑い昼下がり。

長い時間、サーシャと話をしている。
何度も何度もクローディッシュが頭を下げていた。

しかし、先事優先のルールがある。
報酬レートがあまりに違うなど、よほどの条件違いでないと先に受けた依頼が優先される。

なんとなく依頼内容の分かるクレッセントは、遠くからずっとその様子を見ていた。
その姿を、心に焼き付けるように。

夕方になって、ようやくクローディッシュがカンナと供にクレッセントのそばに来た。

「クレス、こんにちは。この娘はカンナって言うの。うちのギルドで数少ない感知系能力者なのよ」
「はじめまして、クレッセントさん。カンナと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
最大の敬意を払うがごとく、深く頭を下げるカンナ。
「うちには、感知能力者がほとんどいないの。この娘とアティスだけ・・・」
にっこり微笑むカンナ。
すごく可愛い♪
「・・・今度、連合からの要請で貴女達と同じ任務につくことになったわ・・・」
そこでつまる、クローディッシュ。
「ク、クレッセント・・・待っててくれてるの知ってた・・・
 長い時間、待たせてごめんなさい・・・そ、それで」
膝をつこうとするクローディッシュ。
すかさず支えるクレッセント。
「わかってるわ、クローディッシュ。わかってる!」

「クレッセント・・・」
涙を流す、クローディッシュ。

「我がままを言ってることは分かってる。
 貴女にとって、無理難題だということも・・・
 サーシャにも叱られたわ。
 クレスを殺すつもりかって、怒られた・・・
 でも、お願いします。
 お願いします、クレッセント」

「わかってるわ、クローディッシュ」

クローディシュを抱きながらクレッセントが言う。

「大丈夫、大丈夫よ。 クローディッシュ」

----------

「それはそうと、我が援軍にはかなりの上玉がまぎれこんでいるな?」
「あぁ、アキアからの感知者達のことだな?」
「お前ら第3部隊ばかりいい思いをして、俺たち第1、第2部隊は敵の正面かよ?」
「バーカ言え。 俺は前線で戦いたいんだ、小娘達の護衛なんぞまっぴらだぜ!」
「お〜っ、じゃぁ代わってやるぜ! 前線に行って死んで来〜い! 俺は、アキア美人と仲良くやってるからよぉ」
ギルド連合騎兵団が集まっている一角。
クレッセント達をちらちら見ながら品定め。
「俺は、あの一番ちっちゃい娘でいいや。お前らちょっかい出すなよ!」
「おいおい、彼女は俺のベイビーだぜ。横から槍入れるなよ^^」
「お前ら、ロリコンか?」
「しかたねぇだろ・・・」
「いるだろが、もう1人?」
「あれはお前、ちょっと・・・」
「あぁ、無理だ、無理だ。最初っからターゲットから外すべきだ♪ 無駄な労力は使わん!」
「彼女は・・・デフィエルデルワーレの
 クレッセントと言うそうですよ」
書類を見ながら1人が言う。
「ほお?」
「ギルドの広告塔らしいです」
「どうりで、なんかちがうわ^^」
「・・・な、なんと!
 バナート戦役の生き残りですね」
「えっ! バナート戦役の? 従軍していたのか?」
「それも中央部隊です!」
「なんだって!!」
驚きを隠せない、連合騎兵団。

「どした? どした?」
「あそこの背の高いアキア女・・・」
「バナート戦役の生き残りらしいぞ」

「えっ! 本当かよ?」

「あの地獄の戦いと言われる、バナートの?」


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