ル・ボーンが状況を問う。
「かんばしくありません! 第3聖騎士団が壊滅します!」
「な、なんだと?!」
「敵はわずか3人なのですが、全員驚くべき強さです。
特に真ん中の奴はたった一人で、中央から突入した第3聖騎士団を・・・」
「ば、ばかな・・・ヘイラー」
炎と煙に包まれた戦闘。
兵士の悲鳴。
少しの間、戦いの様子を見ていたル・ボーンが部下を呼ぶ。
「ミラと、カンナを下げろ・・・」
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「な、なんて強さだ」
「だ、だめだ・・・撤収しろ!」
「バカもん! ひるむな突撃しろ!!」
「うわぁ!!!」
鉄兜を被った聖騎士の頭骨を、まるで豆腐のように粉砕するモーニングスター。

「はっはっはっはっはっ! 弱すぎる! 弱すぎるぜ!!」
左の一撃で潰しておきながら、さらに右で止めを刺す。
飛び散る血飛沫(しぶき)と肉片。
銃すら存在するこの時代に、打撃用の武器を使用するのは、威嚇目的のみである。
ぐしゃぐしゃに潰された同僚の頭部に、広範囲に飛散する肉片。
そして頭皮が絡みつき真っ赤に染まるモーンジングスターに、全員が恐怖する。
聖騎士団や、連合騎兵団といっても実戦経験のある者ばかりではない。
「た、たすけ・」
ぐっしゃ! ぐしゃっ!!
鈍い金属音とともに骨のくだける音。
「ひるむな! 我らが止めねば、だれが止める! 突・」
ぐしゃ! ぐしゃっ!!
「だ、団長!!」
「う、うっわぁ! 撤退だ。撤退しろ!」
「あん?ここまで来て逃げるなよ! 最後までつきあえよ!!」
逃げ出す聖騎士団。
追うヴィンガドーラの戦士。
「は、速い!」
「うっわぁー!!」
「ぎゃー!!」
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「ふん、バナート戦役と言ったって、
戦死者のほどんどは感知系とその護衛だったんだろ?
バトル系のバスターにはほとんど被害がでてなかったらしいじゃねぇか。
感知系が多すぎて死傷者の数がはねあがり、
その数だけで戦役って命名したんじゃねぇの?」
「やめんか!
参加もしていなかった者が戦役の批判、
ましてや殉教した英霊を侮辱するような発言、
絶対に許さんぞ!!」
連合騎兵団総長バクトリンゲンの一喝。
「す、すいません!
調子に乗って・・・
思ってもいないことをつい、口走ってしまいました」
「こちらの退魔団の団長ル・ボーン殿は、
バナート戦役の真っ只中で戦った教団の英雄だ。
己の勇は口ではなく、
団長のようにその行動で示せ!」
「は、はい!」
「はい、申し訳ありませんでした」
バナート戦役の英雄と聞き、驚くギルド連合の騎兵団達。
「バナート戦役の英雄だって?!」
「ル・ボーン殿、教えてください。
我々連合の中でバナート戦役を生き残った者はほとんどいません」
「ましてや中央戦線は地獄だったと聞き及んでいます。
どうか、その一端だけでも・・・」
「私もぜひお聞かせ願いたい。どうかお願いします」
「ル・ボーン殿。
どうかバナート戦役の雰囲気だけでも、
こいつらに教えてやってはもらえないでしょうか。
私からもお願いします」
連合騎兵団総長のバクトリンゲンが
ル・ボーンに頭を下げる。
総長の頼みとあって、ル・ボーンもその重い口を開く。
「私は、英雄などではない。
ただ・・・バナート戦役を生き残っただけだ。
部下のほとんどは殉教したというのに。
おめおめと生き恥をさらして帰還した。
ただ、これだけは伝えたかった。
私の部下は迫り来る強大な敵に対し、最後まで勇敢に戦いぬいた。
英雄とは彼らにこそ、与えられる称号だ。
私にではない!」
静まり返る連合騎兵団達。
「ハンターでもソルジャーでも、バスターの最高峰はランクSだ。
でも、噂では聞いたことがあるだろう。
ランクSをはるかに凌ぐ存在として語られる者達のことを。
ランクS基準の100倍以上の能力を持った者達。
彼らを見た者はほとんどいないが、
その者達のことを慣習にならい、
ダブルS(SS)と称することにしよう。
バナート戦役があまりにも苛烈だったのは、
このSS同士の大規模な戦闘が行われたことだ」
「SS、本当にいるのか?」
「信じられん・・・」
「そんな人間が、存在するのか?」
ざわつく連合騎兵団達。
「君たちは、見たことがあるだろうか?
人の魂を食らう、地獄から蘇った怨霊を。
霧と共に現れ霧と共に消える、亡者の軍団を。
そして、それら怨霊や亡者を黄泉の世界から呼び出す人間を。
時間と空間をねじ曲げ、時空迷宮を作る人間を。
雲ひとつない紺碧の空から、いきなり雷を落とす人間を。
多くのバスターを、いとも簡単に木っ端微塵にできる人間を。
君たちは、見たことがあるだろうか?
冥府の扉を、自由にこじ開けることができる人間を。
バナート戦役では、そんな想像を絶するSS同士の、
壮絶なバトルが繰り広げられたのだよ。
その中で、教団、聖教会、連合、
そしてギルド・デフィエルデルワーレが
名誉と信念と、
その命を懸けて闘った。
中央戦線で勝ち残った、
デフィエルデルワーレのメンバーこそ、
バナート戦役の真の英雄だ!」
「おぉぉぉ・・・す、すごい」
「そんなにすさまじい戦いだったのか、バナート戦役とは」
「私もぜひ参加したかったなぁ♪」
「ははは、バカ参加してたら、とっくに死んでるぜ^^」
「し、信じられない・・・亡者を呼び出す人間や、雷を落とす人間が実際にこの世に存在するなんて!」
「お前、信じられるか? 冥府の扉をこじ開ける人間なんて・・・」
「それは、もう人ではない。 悪魔や、魔人の領域だ!」
「だた、見誤らないで欲しい。
そんなとんでもない能力の持ち主でも、我々と同じ人間だということを。
その能力を得る為にどれだけ苦しい修行や経験、
そして、どれだけ辛い思いをしてきたか。
君達だってそうだろう?
ここまで来る為にどれだけの努力をしてきたか?
どれだけの犠牲をしいられてきたか?
この世に悪魔や、魔女、魔人のたぐいなど存在はしない。
我々の弱い心が生み出したり、
優れた人間をねたんで作り出した、
単なる妄想だ」
「確かに。 確かにそのとおりです。・・・心洗われました!」
「とても勉強になりました。ありがとうございます!」
「ル・ボーン殿、ためになる話を聞き、身が振るえる思いです」
感じ入る連合騎兵団や聖騎士団達。
それとは別に、顔を見合わせる教団関係者達・・・
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