2012年10月28日

テスペランサ・ドゥ・ココ12

<この教会か?
 考えたな、ここならサンタンフェロ祭へもランシルバニアへも行きやすい>
ル・ボーンの向かう先に、古びた教会がそびえ立つ。

「ミラからの報告では、あとヴァンガドーラ2名も倒したらしいしな」
ル・ボーンが退魔団員に語りかける。
「すごいですね、隠れているだけかと思ってたのに。まさか、反撃をくわえているなんて」
「あのヴァンガドーラを、3人も・・・よく倒せましたね。驚きです」
「どれだけ強いんだ、彼女は?」

<確かに、信じられん。
 1人目の時もそうだ。まさかあんな怪物を倒せるとは想像もしなかった。
 そして今回は2人も倒している。
 そのうちの1人は、初回にあの怪物と一緒に暴れていた剣士だ。
 奴の腕も相当なものだった>

教会の中に入る。

礼拝堂の入り口付近に、シスターが2人いた。
<この教会は、女子修道会系なのかな?
 にしても、やけに派手なシスターだな>
ル・ボーンに気づいて彼女達が近づいてきた。
「おぉっ、綺麗なシスターですね」
「うわっほんとだ、すっごい美人」
美しきシスターを見て喜ぶ団員達。
<うん、なかなかのもんだな・・・目の保養になる>
ル・ボーンも、ついつい目じりが下がる。

<!って! この服?・・・教団じゃねぇ!!>
たじろぐ、ル・ボーン。
<聖教会だ! お、おまけに、こいつっ!!>

「お久しぶりね、ブラザー・ル・ボーン」

ミディア03.jpg

「ミッ! ミッ! ミ・ディア!!」

思わず後ろへ飛び退くル・ボーン。

<ニコールもいる!>
バナートでの記憶がいやでも蘇る。
<ど、どうして・・・どうして、こいつらがここにいる?>
あたふたするル・ボーンを見て、顔を見合わせる団員達。

<あの最終局面。
 俺達退魔団に雷を落としたのが、マティアス!
 突入してきた連合の特殊部隊を教会ごと吹っ飛ばしたのが、ミディアだ!
 退魔団と連合が一瞬にして壊滅した・・・
 見かけは天使のような美しさだが、
 中身は悪鬼!
 全員、化け物だ!!>

「こ、これは・・・、ごぶさたしております。シスターミディア、シスターニコール」

<よりによって、なぜその化け物どもがここにいる?>

団員の1人が何か気づいたようだ。
「あっ、その制服・・・?
 だ、団長! このシスター達は・・・」
「そ・それ以上、しゃべるな!
 語るな!
 質問するなっ!
 これは命令だ!
 いいか、わかったな!!」
「は、はい・・・」
「わかりました!」
と言いつつも、いぶかしがる団員達。

<ど、どうする?
 こいつら異端なだけでなく、悪魔崇拝者、邪教徒だぞ。隠し通せるのか?>

「シ、シスター・ミディア、な・なぜここに?」
「えぇ、クレッセントに頼まれて。ミラを守る依頼を受けたんです」
「クレスが?」
<あんの、バ・カ・め・が・ぁ!
 余計な心配、増やしやがって!
 と・とにかく、教団関係者を遠避けねば・・・>

「せ、聖教会だよな・・・」
「そうだ、間違いない。い、異端だ」
「は、初めて見た。本物の異端・・・」
「おい、異端と会話したら火炙りになるぞ」
「そんなこと言ったって、団長は話してるぜ」
「団長はいいんだよ。自分で自分の身を守れるから。俺達はそうはいかないんだよ」
「にしても、なんて綺麗な異端なんだ?」
「本物の異端は、みんな魅力的らしいぞ」
「馬鹿、あれで俺達を惑わせるんだ。気をつけろ!」
小声でこそこそと、好き放題話す団員達。
「お・俺はちょっと、団長と一緒に彼女達と話してくる」
「やめろ、火炙りにされるぞ」
「火炙りは怖いが、どうせヴァンガドーラと戦えば、生きては帰れまい。火炙りになる前に殉教さ」
「そ、それもそうだなぁ」
「それに俺の国オーマでは、女性を見たら必ず話しかけろってな。法律できまってんだ♪」
「そうだったな♪ 俺も行くぞ!」

団長を押しのけて、美しきシスターに群がる団員達。

<こ・こいつら、俺の命令は無視かよ・・・>
頭の混乱を未だに収拾できないル・ボーン。

「まぁ、お上手ですこと・・・ふふふふふ」
ミディアが両手をあわせて、天使のように微笑む。
<おいおい、猫かぶりか?>
「いえ本当ですよ。私の国にも美人は多いが、貴女達ほど綺麗な女性は見たことがない」
「そうです。教団にもシスターは大勢いますが、こんな美しいシスターと出会ったことはありません!」
「まぁ♪ 本当に修道士様ですの? 私、俗世のジゴロかカサノバに口説かれているみたいですわ」
<ジゴロもカサノバも、まだいねぇって!>
「私は修道士である前に、オーマ人ですから!」
<・・・仕方ないか、こいつらの半分以上はオーマ人。
 女性は褒めて褒めて、褒めたおす・・・子供のころから、そう教えられてきたもんなぁ>
「いや、本当! こんなに美しいシスターは教団にはいませんよ」
<しかしお前ら、実際にこの悪鬼どもの本性を見たら・・・金玉、へそまでめりこむぞぉ!>

にやにやしながら傍観していたル・ボーンだが、ふとわれに返り・・・
<いや、それどころじゃない!
 どうしたらいいんだ?
 冷静になれ、一から確認するんだ。
 我々の目的はサンタンフェロ祭における、ヴァンガドーラの教団幹部暗殺阻止。
 俺の現在の目標は、カバリエレ・ディ・ジュスティツィア(正義の騎士)の有効かつ効率的な運営。
 そしてこの部隊をもって、ヴァンガドーラを撃つ>

「まぁ、騒がしいと思ったらカーディナル。来られてたんですね?」

<そこにこともあろうことか、異端が混じってきた。
 しかもこの異端は邪教徒の上に、超がつくほどの化け物だ・・・>

「カーディナル!! 聞こえてますか?」
「わっ! クレッセント」
「こんなところで油を売ってないで、こちらへどうぞ」
クレッセントに招かれるまま、大広間へ入っていく。

「ミディアとニコールのご紹介は、もう終わっているようですね?」
「あ、あぁ」
ふんずけられた、足が痛い。
「では、こちらが」
クレッセントが手を差し伸べる先に真っ白な騎士装束に身を包む、背の高い女性がいる。
「セイレン騎士団の・・・」

メルローズ01.jpg

「メルローズと申します。以後お見知りおきを」
颯爽と騎士の礼をとるメルローズ。
「おぉぉぉぉ!」
団員達の目が釘付けになる。
<メルローズ!
 セイレン騎士団といえば、
 数ある教団の騎士団の中にあって
 東部方面、最強と称される騎士団だ。
 異教徒を威圧し、
 戦いとなれば真っ先に突撃
 そして制圧する
 教団の最精鋭部隊。
 そこのナンバー2か!!>
ル・ボーンもメルローズに釘付けだ。

「セイレン騎士団・・・って、
 確かサンフランチェスカ女子修道会、ホスピタル騎士団ですよね?」
団員の1人が尋ねる。
「女子修道会ってことは・・・シスターですか?」
「えぇ、所属はサンフランチェスカ女子修道会です」
メルローズが笑顔で答える。
「おぉぉぉ!」
感嘆の声をもらす団員達。
「そら見ろ!
 教団にだって、超美人のシスターはいるんだっ!!」
ル・ボーンが挑戦的にミディアを見る。
「いえいえ。私なんか、シスター・メルローズの足元にも及びませんわ♪」
あいもかわらずミディアは、マティアス譲りの天使の微笑み。

ル・ボーン<どこまで猫かぶるつもりだぁ?>

メルローズ<よく言うわ・・・その態度の豹変ぶりは何?>

メルローズとミディアの視線に

火花散る。


ル・ボーンもミディアをにらんではいるが

こちらは、

無視されてるみたいだ。


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