待ち構えていたのは、連合の竜騎兵。
マスケットが一斉に火を噴く。 ←注1
パパパパパパパーーーン!!
耳を劈く銃声。
数知れぬ銃弾がヴァンガドーラを襲う。
「うおっー!!」
「うっ!」
間髪入れず2射目が掃射。
パパパパパパパーーーン!!
100丁以上ものマスケットによる掃射だ。
「く、くっそぉ!」
なんとかかわしながら、転がりながらも、建物の影に隠れるヴァンガドーラ達。
「ドラグーン! それにパイク兵団もいたわ」
「どこの部隊だ?」
「連合旗があがっています。ギルド連合の竜騎兵だと思われます」
「連合め、ついに虎の子、ドラグーンを投入してきたってわけか!」
「戦争でも始めるつもりかぁ!」
「だめだ、抜ける・・・俺のバリアと装甲障壁では、奴等の弾丸が抜ける」
負傷した足を押えながらロドリゴがうめくように言う。
この時代の弾丸は、現在のフルメタルジャケットとは違い
鉛を硬い金属で覆ってはいない、いわゆるソフトポイント弾だ。
鉛弾を鎧や甲で完全に防げればいいが、もし抜けた場合は鉛が飛散し身体に食い込む。
おまけに鉛は身体を腐らせる。
銃に対しては鎧を着ていたほうが命の危険が増すということで、この時代以降甲冑というものは廃れていく。
直撃を食らっても抜ける、もしくは固まったままの鉛弾をきれいに取り出したほうが、命が助かる可能性が高くなるのだ。
「なんてジャミングだ! 竜騎兵がいるなんて、全く分からなかった!」
「こんな強力なジャミング・・・間違いない、絶対アキアの奴らがいるぞ!!」
「お前達はこんな状態で、あいつらと戦っていたのか?」
イリスがロドリゴに聞く。
「い、いや違う!
フリオ達が最初に感知者狩りをしたときには、敵の感知者全員を判別できてたんだ。
ここになって、感知者どころか状況すら探知できなくなってきている!」
「完全にアキアのバスター達を敵に、まわしたってことね・・・」
ソフィアが言う。
「ココ、俺のことは捨て置いてかまわない。悪鬼どもに制裁を!」
ロドリゴが叫ぶ。
「セラ、ロドリゴをお願い。
私が切り込む。間をおいて、動ける者は全員突入! いいわね?」
ココの命令が飛ぶ。
「はい!」
「おぉ!」
「わかったわ」
正面から突っ込むココ。
一斉に火を噴くマスケッド。
ココが両掌を前に向ける。
無数の弾丸が急に失速し、ココの前で止まった。
全弾止めたところで、ココの手が前方に突き出された。
止まっていた弾丸が、一斉に竜騎兵に向かって跳ね返される。
「うっ、うわぁっ!!」
「ばかなっ!!」
信じがたい反撃で、浮き足立つ連合の兵士たち。
そもそも竜騎兵とは、銃を持った騎兵のことである。
竜が火を噴くと考えられていたことから、竜騎兵(ドラグーン)と呼ばれた。
この時代の竜騎兵は、馬上から銃を撃つことはなく、移動手段として馬を利用したのである。
ただでさえ命中率の悪い射撃を、揺れる馬上からではまったくあたらないとの判断であろう。
射撃は馬から降りて、地面に突き刺した銃座にマスケッドとよばれる銃をセットして行った。
しかし、無敵とも思われる竜騎兵にも天敵がある。
言わずと知れた、騎兵の突撃だ。
いくら火を噴く竜でも、騎兵の突撃を食らってはひとたまりもない。
そして考案されたのが、パイクと呼ばれる長槍を持った部隊を竜騎兵の前に配する戦術だ。
騎兵を止めるには、長槍というわけだ。
止めてしまえば、ドラグーンの破壊力は絶大だ。
しかし今相手にしているのは、ヴィンガドーラ。
教団に復讐を誓う魔導士軍団の長、
テスペランサ・ココの跳ね返した鉛弾がドラグーン達を襲う。
ココが前方の地面に向けて手を突き出す。
無数の弾丸を受け混乱する連合兵士達を、
棒高跳びのように円弧を描いて飛び越えた。
その背後に、ターゲット。
立ちふさがる護衛。
一切目もくれず、一気に駆け抜けるココ。
右手だけが、横に一閃。
護衛達が振り返った先のココは、
すでにはるか遠くだった。
彼らがほっとしたのもつかの間
神父の首が
ぽとりと落ちた。
注1:この時代の銃。最もメジャーな銃の名前から、銃のことをマスケットと呼んだ。
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