2012年04月23日

ベイムート伯爵の怨念01

「ギルド連合からの直接依頼です。
 報酬でいえばランクS。
 以前からある依頼なんですが、今ままで12組のハンターが引き受け、そのことごとくが失敗しています。
 依頼料金というものは、引受人がいない場合や引受人が失敗した場合など、つり上がっていきます。
 これ以上依頼人が出せない、というところでお宮入りする依頼も多いと聞きます。
 この依頼もすでに40万レイ(約1000万円)です。
 前金無しの、全額成功報酬となっています」
「40万レイ!」
「本来レベルSが受けるべき依頼なんですが、四天王のうち今ギルドにいるのはワーレンとサーシャだけです。
 ところが、2人とも他のミッションが入っていますので、特Aランクの君たちにと思いまして・・・
 リングホルンさんがリーダーで、ベジネイトさんを副リーダーに。
 それぞれのチームからあと2人選抜してもらうということで、どうでしょう?」
特Aの2人とそれぞれの書記役1名ずつ、計4人を呼び出し、ギルドマスターが新しい依頼の説明をしている。
大きな依頼には聞き漏らしのないように、必ず書記役を連れて行くのが慣わしだ。
依頼を正式に引き受けると、それ以降はミッションと呼ばれるようになる。
「はっ、お引き受けいたします!」
「私も、お受けいたします」
リングホルン、ベジネイトともに即答。
「ありがとう、頼みましたよ。
 あとクレッセントさんも参加するので、7マンセルでのミッションになります」
「ほー、クレスが」
「えっ、クレッセントも」
リングホルンの書記役のリコと、ベジネイト側のアンリがうれしそうに言う。
「どうしてクレッセントが?」
いぶかしげにベジネイトが質問する。
「彼女の得意分野の可能性があるの。
 簡単に処理できたら遠慮なくクレスを伝令役でパシらせてくれていいから。
 あなたたちはその後の休暇を楽しんで」
ギルドマスターの横で、脚を組んで座るサーシャが応えた。
「はっ、クレッセント、心より歓迎いたします!」
リングホルンがサーシャに向けて敬礼を送る。
「よろしくお願いするわ、リングホルン」
サーシャが笑顔で答える。

「40万レイ!
 7人で分けても、このミッションだけで半年分以上の報酬になるぜ。
 おまけにクレスまでついてくるとなると、あと1人の席は激しい争奪戦になるな」
「おいリコ。お前を連れて行くって、いつ言った?」
ニコニコ顔のリングホルン。
「そ・そりゃないぜ、リングホルン・さ・ま・ぁ・・・」
「はっはっはっ、冗談だリコ。
 しかし、クレスとは珍しい。
 彼女はいつもサーシャと一緒にいるか、ワンニャン(犬猫)探しだからな」
「あと、オカルトシーング(オカルト見物)」
「そうそれだ、リコ」
どう見てもうれしそうな2人がじゃれ合う。

「えっ、クレスも来るの?」
「クレスが参加するって?」
「行きたい♪」
「私も、行きたい!」
クレッセントが参加すると聞いて、にわかに騒がしくなる女子たち。
「クレスと1回、ミッションしてみたかったんだぁ」
「クレスってサーシャチームの常連だから、なかなか一緒になれないのよね」
「2マンセルのときでも、だいたいはクレスが行くでしょう?」
「いいなぁ、私もサーシャと2マンセルしてみた〜い」
「私はクレスとしてみたいわ」
「何かが起きるわよ、クレスと2人っきりなんて♪」
「いい加減にしなさい!」
ベジネイトが机を叩いて注意する。
「ギルドからのミッションを、何だと思っているの?
 誰と組むか、じゃなくて何を成すべきかでしょう!」
<ランクSのミッションよ、特A2人と後は全員Aランクでそろえたかったのに・・・>

「まったく、あの娘(こ)たちは何を考えているのか。
 ランクAの娘たちまでキャーキャー騒いで。
 ミッションを何だと思っているの!」
出立の前日、ベジネイトが自チームの選考の様子をリングホルンに不満げに話す。
「まぁ、そうカリカリするな。
 ベジネイトらしくもない。
 それは仕方の無いことさ。
 男に限らず女性でも、クレスお目当てでギルドに入ってきてる娘は多いんだ」
リングホルンがなだめる。
特Aランクになったばかりのベジネイトにとって、リングホルンは大先輩であり、気のおける友人でもある。
「でも、そんな不純な動機で入団してもらっても、この先役に立つかどうか分かったものじゃないわ!」
「俺も当初はそう思ったさ。
 少数でも精鋭、磨き抜かれた猛者達の集う最強のギルド。
 そんなものに憧れたものさ。
 そして俺達のギルドもそれを目指していた。
 そこへサーシャが加わり、クレッセントが入って来た。
 彼女たちが広告塔と言われるようになり、町での宣伝活動も功を奏しギルドは一変した。
 入団希望者が殺到し、数のギルドになった。
 烏合の衆と陰口をたたく奴らもいたさ。
 しかしその後デフィエルデルワーレは、この町3大ギルドの1つと呼ばれるようになった。
 数は力だ!と方針を変えたギルマスの気持ちが、今ではよく分かる」
「でも、烏合の衆では・・・」
「そうだな。
 でもその烏合が底辺となりギルドを支える。
 ハンターにあまり興味のなかった者達まで加わり、
 クレッセントやサーシャ、そしてワーレンなど四天王に対する憧れが、いずれ目標となる。
 数が多ければそこから育つ逸材も多くなり、生まれる奇跡も増えてくるんだ。
 注意深く見てみな、クレスの取り巻きの中にも、結構逸材がいるんだぜ」
「取り巻きって、あのいつも金魚の糞みたいにクレスにつきまとってる娘達?
 確か、オカルトクラブ・・・かなんか作ってたわよね?」
「そうそう、あの娘たちだ」
「逸材・・・と言っても、クレスそのものはハンターランクBよ。
 私達が全身全霊をかけて挑むミッションを、彼女が軽んじている証拠だわ!」
「そうとは限らんさ。
 彼女にはやりたいミッションがあり、それを続けていくためにランクBであることが必要なんだろう。
 ランクAになると、ランクBやCの依頼は受けなくなる。
 というか受けるなと言われる。
 それは自身の向上のためにそう言うのだが、彼女が好きな人探しや犬猫探し、そしてオカルトの案件は全てランクB以下だ」
「ハンターとは自身を磨き、より高みを目指して切磋琢磨するもの!
 そう教えられてきたわ。
 より大きな、そしてより困難なミッションをコンプリートするために!」
「そうだ、そのとおりだ!
 それがハンターたるものの生き様だ!
 ベジネイト、お前が正しい!!」
「ふふふ・・・貴方にそう言ってもらえて、なんか気が晴れたわ。
 どうもありがとう」
「あぁ、いいってことさ。
 少しだけ俺のほうが先輩だからな」  
「それでもあの陣形には、ちょっと不満があるわ。
 私が後衛であることは全然かまわないけど。
 リーダーである貴方が中央でなくて、前衛。
 中央はクレスだなんて!
 サーシャはいったい何を考えているのかしら?」
「サーシャじゃない、ギルマスからの命令だ。
 それに、中央でなければクレスを前衛のどこに配する?」
「後衛でもいいわ」
「じゃぁ、後衛のどこに配する?」
「後衛右翼でいいわ、私が後ろからサポートするから」
「そう、そこなんだよ。
 サーシャチームの常連、ギルドの看板娘であり広告塔。
 しかし、ハンターランクはB。
 どこに配置するかによって、誰がどう動くか考えなければならない。
 サーシャは気を使ってくれたんだ、俺に・・・」
「ん? どういうこと?」
「クレスは何も考えずに、中央に置いとけってことさ。
 命令として・・・
 へんな話だが、俺は余計な考えをめぐらさなくて済むから、すごく助かっている」
「でもぉ・・・」
「ランクBのメンバーをフォローしてミッションを成功させるのも、俺たち特Aの役割ってわけさ。
 ベジネイト」
「・・・うん、そうね」
まだ不満そうだが、なんとか納得するベジネイト。
「俺のチームが前衛として切り込み、お前のチームが後衛として守る。
 そして中央はサーシャの名代。
 完璧な陣形さ・・・はははははっ」
「ふふふっ・・・ほんと、のん気ね」

----------
 
「いやぁ、楽しいなぁ♪
 こんな楽しいミッションは初めてだ」
リコが現地に向かう道中、ご機嫌でしゃべりまくっている。
チーム編成も終え、準備万端で出立した一行。
リングホルンチームからはリコとイジルが参加している。
ともにランクAだ。
「そうね、なんかワクワクしてくるわね」
アンリも楽しそうに答える。
ベジネイトチームからはアンリとニナが加わっている。
アンリはランクAだが、ニナはランクBだ。
ランクAで固めたかったベジネイトだが、選考の様子が気に入らなかったため抽選にしたのだ。
結果が出たとき小さな声でベジネイトがつぶやいたそうだ。
・・・しまった・・・と。

「3大ギルドで女性が一番多い我がギルドにおいても、なかなか女の子と組むことはできないのに、今回は女性のほうが多いんだぜ!」
「うん、そうね。
 4対3、私たち女性の方が多い」
「右を向いたらかわい子ちゃんのアンリだし、左をむいたら鼻血ブーのクレスだぜぇっ。
 今この瞬間、俺は両手に花だぁ!」
「へたなお世辞ね、リコ。ふふふ」
「なぁに、それ?
 私、鼻血なんか出してないわ♪」
クレッセントが笑いながら言う。
「おぉ〜、クレスのこのズレ加減も最っ高!」
「クレスだったら、ズレてても、ボケてても何でも許しちゃうわぁ」
アンリがクレッセントの腕にからみつく。
「ねぇ、ねぇ、クレスさん。
 今回の連続失踪事件って、なんか裏があるんでしょうね?」
イジルがクレッセントに話しかける。
「深い霧がでると、必ず失踪者がでる・・・」
背の高いリコに比べてイジルは中背、顔も童顔なので敬語がよく似合う。
「この依頼自体、ギルド連合からの直接依頼だし、なんか訳ありって感じだよな」
リコがすかさず続ける。
「12組も失敗した依頼なんでしょう?
 何か知ってる、クレス?」
ちょっと不安げなアンリ。
「今回の依頼に関係あるのかどうかは分からないけど、これから行くバナートの地には以前からちょっとしたうわさがあるのよ。
 バナートの西のはずれにある村に、国境を越えて家族3人がたどり着いたの。
 両親と娘1人、村人たちは疲れ果てた彼らを厚く保護してあげたの。
 家族はとても感謝し、持てる知識と、わずかの手持ちを村人たちの為に使ったわ。
 家族ははるか西方の国の貴族だったの。
 政変で追われ、ここまで命からがら逃げてきたのよ。
 亡命者ということで、どこでも厄介者扱い。
 でもこの地で温かく迎えられ、この地で村人たちと幸せに暮らしていたの。
 追われる身としては村人たちの優しい笑顔が心の支えであり、村人たちも彼らの博識、特に医術の知識がとても有難かったのよ。
 やがて娘は村の若者と恋に落ち、結婚することになったわ」
「いい話じゃない」
アンリが童話でも聞く少女のような面持ちで言う。
「でも、そんな穏やかな日々も長くは続かなかった」
「お、いよいよ佳境だな」
リングホルンも近寄って聞いている。
「追っ手が家族を見つけ、彼らのとんでもない罪状を村人たちに告げたの。
 長老やその息子の突然の死や、ここのところのたび重なる事故。
 娘が以前大きな岩を動かした、などとの証言も加わり
 パニックになった村人たちが結婚式の前夜、娘を捕らえ火炙りにした」
「えっ! そんな・・・」
アンリが悲しげにささやく。
「魔導士だった娘の父親は悲しみで我を忘れ、追っ手と村人たちを皆殺しにした。
 深い霧の夜だったそうよ。
 随分昔の話なんだけど、それ以来この地は深い霧の日には失踪事件が耐えないそうなの。
 可愛そうな娘の復活を誓い、娘の父が1000人の魂を集めているといううわさよ」
「なんか悲しい話ね」
「あぁ、娘を火炙りにする必要があったのかね・・・」
「今も続く、父親の怨念か」

クレッセントを中心に騒ぐチームメイトを冷ややかに見ながら、ベジネイトがつぶやく。

「怨念だなんて・・・いいかげんにしてよ」


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2012年04月24日

ベイムート伯爵の怨念02

地下のカタコンベ。
たいまつをもって進むリングホルン隊。
薄暗い通路がどこまでも続く。
もうどれほど歩いたか。

依頼のあった修道院近くのカタコンベ。
失敗した12組のハンターチームのうち8組が、ここで遭難しているそうだ。

クレッセントの脚が止まる。
右前方の暗闇に集中。
「最大防御! 2時方向!!」
クレッセントが大声で叫ぶ。
「なに?!」
素早く反応する、リングホルン。

ドーーーン!!
という音と共に、目の前が真っ暗になった。

あっ、落ちる! 
足元の地面が無くなり落ちる!
「うぅっ! わぁぁぁぁぁぁ!!」
奈落の底に落ちていく!
「精神攻撃よっ! 気を確かに保って!」
さらにクレッセントが叫んだ。
<精神攻撃? こ、これが精神攻撃だと・・・こんな強烈な攻撃、初めてだ!
 まるで現実。異空間に連れ込まれたんじゃないのか!!>
<幻覚ですって? 本当にこれが、幻覚なの?>
特Aランクのリングホルン、ベジネイトはまだ冷静な思考ができたが、他は放心状態だ。
「局所防御! 物理攻撃よ、正面2時!!」
<クレスの叫び声だけが聞こえる・・・周りは?>
うっすらと見えてくる。
自分を含めて全員暗闇の中で倒れるか、膝まづいてる。
リングホルンの目の前で、非現実的な光景がスローモーションで展開する。
<右正面から閃光。
 リコを狙っている。
 あ、危ない、リコ!!
 だ、だめだ!・・・動けない!!>
暗闇の中、唯一動いているクレッセントが鉄扇でその閃光を跳ね返す。
第2射、ターゲットは後衛のアンリだ!
「アンリ!
 逃げて、アンリ!!」
ベジネイトが叫ぶ。
アンリが、迫り来る閃光に気づく。
が、右手を上げるだけで、何もできない。
襲いかかる閃光。
<・・・もうだめ!>

バチーンッ!!
直前でクレッセントの鉄扇が閃光を弾いた。

アンリの瞳がクレッセントを追う。
「リンガ!」
クレッセントの両手が鋭く開く。
リンガ10閃、弧を描く。

第3射、4射がメンバーを襲う。
リンガがそれを叩き落す。
2時方向、残りのリンガが一気に反撃。
クレッセントが同じく2時方向に跳ぶ。

ガギーン!
鈍い金属音。

一気に視界が戻った。
たいまつの灯りがまわりを照らし出す。

もといた場所、カタコンベだ。
さっきより全体が黒く、焼け焦げた臭いがする。
閃光を受けた跡なのか、クレッセントが弾いた先が何箇所も黒焦げになっていた。

正面右の暗闇から、ヒールの音が響く。

クレッセントが鉄扇を右手に肩を軽くたたきながら歩いてくる。
回りを注意深く観察しながらも、涼しい顔で戻ってきた。

無傷の上に、その白き衣装にも一点の汚れも無い。

アンリが羨望の眼差しでクレッセントを見上げる。

リコとイジルが軽い火傷を負った。

----------

「クレス、ありがとう。貴女は私の命の恩人よ。本当にありがとう」
「いいえアンリ、貴女だって逆の立場だったら私を助けてくれたはずよ。おあいこよ」
「なにそれ?全然おあいこじゃないじゃん?貴女はやっぱりとっても素敵な人よ。私の憧れのクレッセントだわ。もう辛抱たまらん^^」
アンリがクレッセントに抱きつく。
「きゃ〜、恥ずかしいわ」
「その気になってきたぁ?」
「ふふん、いつでもお相手するわよ〜。アンリだったら♪」
「うわっ、鼻血ぶ〜っ!」
2人の会話を聞いていたリコが口を挟む。
「リコ。いいところなんだから、ちゃちゃいれないでよ!」
「クレス、俺も礼を言わせてくれ。ありがとう、本当に助かったよ。今こうしていられるのもクレスのおかげだ。
 現場に残っていた黒焦げの太い槍を見ただろう。あんなものに貫かれていたら、一巻の終わりだった。
 おまけに着弾とともに爆発する仕掛けになっていたなんて・・・」
「火の属性を限界まで貯めてから、投擲してきたんでしょうね。それも正確に。
 クレスさん、僕からも心からお礼を言わせてください。
 貴女がリンガで弾いてくれなかったら、僕はあの太い槍に貫かれ、そして粉々に消し飛んでいました。
 あの時は一瞬の出来事でしたが、今考えれば考えるほど恐ろしい。震えがとまらない」
「敵の策にのる必要はないわ。
 わざわざあんな太い槍で攻撃してきた理由、それは私たちに恐怖心を植え付けるため。
 人1人なら炎を貯めた矢かダガーで十分なはずよ」
「そう・・・なんだけど。この震えは、なかなか止まらない」
にっこりと微笑みかけるクレッセント。
「それはそうと、クレス。どうしても聞きたいことがあるんだ、教えてくれないか?」
「なによ、リコ。改まって?」
アンリがからかい半分に言う、私のクレスにちょっかい出さないでって目をしている。
「なぜ、クレスだけが敵のマインドコントロールに落ちかなったのか?
 バカみたいな質問で申し訳ないんだが、俺の不注意だったってことは十分わかっているんだが・・・
 どうしても聞きたいんだ、今後の勉強のためにも。俺とクレスとではあの時、何が違っていたのかを」
「私も、私も教えて欲しいわ・・・スキルの違いだと思うなら、そう言って」
アンリもリコに続いて言う。
「私はあの時、たまたま正面右の暗闇を見ていたの。たいまつの灯りが通らないその空間がとても気になって。
 ずっと見つめていたわ・・・何かがいるような気がして。
 そして確信したわ、敵だと。
 叫ぶと同時に防御結界を張ったの。
 まず精神防御、それから物理防御」
「なぜ、精神防御を先にしたんですか?」とイジル。
「私は結構好きでオカルト事案を受けることが多いんだけど、オカルト系は精神攻撃が圧倒的に多いわ。
 だから、とっさのとき精神防御、物理防御の順でかける習慣になっているのね。
 それに、物理攻撃より精神攻撃のほうが先にこちらに届くわ」
「な・る・ほ・ど、そうなのか! 有難うクレス、すごくためになったぜ」
「あともう一つ、とても重要なことがあるわ。精神攻撃には必ずその次の罠があるの」
「なんでも教えて。私は精神攻撃ってはじめてなの」とアンリが言う。
「僕だって初めてなんです。どう対処していいのかわからないんで、教えてください」
「精神攻撃に落ちたと思ったら、下手に動き回ってはダメよ。
 敵からの攻撃はできるだけ最初いた場所からあまり動かないように防御して。
 右、右、右とかわしていくと、その先に落とし穴があるわ。
 かわすときは右、左、右とかわすの。もしくは円を描くように。
 それから、敵からの攻撃に反撃してはだめよ。
 反撃すると、味方に攻撃することになりかねないわ。
 精神攻撃に落ちたと判断したら、絶対に大きく動いたり、反撃してはだめ」

<精神攻撃は、罠への誘導ってことか・・・さすがサーシャの秘蔵っ子だ>
クレスたちの会話からちょっと離れたところに、リングホルンがいた。


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2012年05月01日

ベイムート伯爵の怨念03

「皆さん、大丈夫でしたか?」
戻ってきたリングホルン達を、オーランド神父が出迎える。
「よくぞご無事で・・・」
「さぁさぁ、こちらへ。みなさんお疲れではありませんか?
 甘いものを用意しておりますから、まずは召し上がってくださいね」
シスターマティアスが、天使の微笑みでみんなをテーブルに誘う。
他のシスターも全員、満面の笑顔でリングホルン達の労をねぎらう。
「わぉ、うれしいね! 美人シスター達とこんなにお近づきになれて」
「リコ、声が大きいわよ」
「アンリ、女性としてはどうなんだ? こんな美女達に囲まれると、うれしい? なんともない?」
「別になんともないわよ。それに私はクレス一筋だから」
「おっ、いいよねそれ。でも、うちの女子はみんな言うんだよな、男よけに・・・」
「なんだ、わかってんじゃん」

ここは今回の依頼主でもある、聖教会の修道院。
オーランド神父は隣にある教会の神父だ。

「まぁ、こんなに可愛い方たちも、一緒にいらっしゃってくれたなんて信じられないわ」
リングホルン達がこの地に到着したと、真っ先に出迎えてくれたのがシスターマティアスだった。
その聖女の微笑みでメンバー達を驚かせた。
「お〜、めっちゃ綺麗じゃないか? シスターマティアス!」
リコが案内された来客用の寝所で大声で叫ぶ。
「クレスとタメ張ってるぞ。シスターにしておくなんて、もったいない!」
「他のシスターたちも、みんなかなりの美形ですよ♪」
それにイジルが続く。
「大きな声で騒ぐんじゃない、シスター達に聞こえるぞ」
ご機嫌な2人をたしなめる、リングホルン。
「それに明日は、朝一からカタコンベだ。早く寝ろ!」

超美人といえばリザや、セイレンが思い浮かぶのだが、
リザのような妖しさ、セイレンのような妖艶さではなく、
シスターマティアスは聖女と呼ぶにふさわしい、清楚な美しさだった。
「あら、なんて綺麗なハンターさんなんでしょう。思わず見とれてしまうわ」
お菓子と飲み物を運んできたマティアスが、素敵な笑顔でクレッセントの顔をのぞき込む。
超美人の突然のアップに、思わずドキッとしてしまうクレッセントだった。
「見つめられると、ちょっと照れちゃうくらいの美形よね。シスターマティアスって」
隣の席のアンリが、小声でクレッセント言う。
「えぇ、そうね。ちょっとドキドキしたわ」
アンリと顔を見合わせながら、微笑み合うクレッセント。

続いて夕食になり、ふと前を見るとマティアスと目があった。
<聖なる美しさって、きっと彼女のような美しさを言うんだろうな>
そんなことを思いながら、ちらりとまたマティアスの方を見た。
まだクレッセントのほうを見ている。
<ん〜、聖女にも効くかしら? お色気波動^^>
パチンとウィンク! 
そして、誘惑波動全開!!
<うっふ〜〜〜んっ! ・・・どうだ?>
マティアスが、頬を染めて視線を外す。
<き・効いた?効いた? やったぁ!>
視線を外したまま、もうこちらを見ない。
<ふふふ、やったわ♪・・・でもどしよぉ、今夜襲われちゃったら^^>
なんて、不謹慎なことを考えて、1人でニヤつくクレッセントだった。

----------

「ベジネイト。ちょっと確認したいことがあるんだが、いいか?」
「えぇ、いいわよ」
夕食後、食堂に残った2人。
「あの強烈な精神攻撃の中、クレスだけがもろともせず動いていた。それに強力な防御結界、気づいていたか?」
「えぇ、個人攻撃してきた閃光は、いわばトドメ。それよりも先にマインドアタックと同時に、強烈は範囲攻撃があったわ」
「そうだ、そしてその防御結界が我々を守ってくれた」
「えぇ、そうね」
「それに先立ち、クレスはいち早く2時の方向に敵がいると叫んだ。その方向に敵の存在を感じたか?」
「いいえ、残念ながら・・・」
「先行する我々のチームも、感知系のリコすら気づかなかった」
「うちのアンリも気づいていなかったわ」
「クレスは感知系なのか? そんな話聞いたことあるか?」
「いいえ、バトル系だと認識していたわ」
「そうだな、あの閃光に反応する素早さはやはりバトル系だろう。
 しかし感知能力にも優れ、強力な精神攻撃も寄せ付けない、極めて高い防御能力もあるってことか?」
「・・・まさか・・・」
「たまたま2時方向の暗闇が気になって、全力で探知してた。
 みたいなことを言ってたが・・・
 あの状況で、そこに注目していたということ事態、彼女の感知能力が並外れている証拠だと思う」

真っ先に敵の襲撃に気づいたのは、クレッセントだった。
敵のマインドコントロールに落ちなかったのも、彼女ただ1人。
リコやアンリ、イジルに対する敵の攻撃から、彼らを守ったのも・・・
そして、その敵に反撃を加え撃退したのも、クレッセントだった。

俺は・・・何もできなかった!

動くことすら、できなかった!


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魔女達の刻
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ベイムート伯爵の怨念
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テスペランサ・ドゥ・ココ
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外伝
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 1:ポロネーゼ婦人 2:エヴァンゼリン 3:妖精の森
 4:伝道 5:美しきオブジェ

白い薔薇の淵まで
中山 可穂
ジャン・ジュネの再来とまで呼ばれる新人女性作家・塁と、平凡なOLの「わたし」はある雨の夜、書店で出会い、恋に落ちた。彼女との甘美で破滅的な性愛に溺れていく「わたし」。

深爪
中山 可穂
翻訳家のなつめは、人妻・吹雪と激しい恋に落ちる。吹雪の家で逢瀬を重ね、子供の昼寝の間に快楽をむさぼる日々。女同士の恋、家庭を壊すつもりなどなかったのに、会えば会うほど溺れてゆき、愛するがゆえに傷つけあわずにはいられない。

猫背の王子
中山 可穂
自分とセックスしている夢を見て、目が覚めた―。女から女へと渡り歩く淫蕩なレズビアンにして、芝居に全生命を賭ける演出家・王寺ミチル。彼女が主宰する小劇団は熱狂的なファンに支えられていた。だが、信頼していた仲間の裏切りが・・・



感情教育
中山 可穂
前世から契りあった恋人はあなたですか?今度こそ永遠に契りあうために、あなたはそこで待っていてくれたのですか?那智と理緒。傷つくことにすら無器用な二人が出会ったとき、魂がふるえ、存在の根源をゆさぶる至高の恋が燃えあがる。

サグラダ・ファミリア
聖家族
中山 可穂
将来を嘱望されながら、ある事件をきっかけに落ちぶれてしまったピアニスト響子。酒に溺れながら孤独に生きる彼女のもとに、かつて恋人だった透子が戻ってきた。赤ん坊を抱いて・・・

屋根裏の二處女
吉屋 信子
寄宿舎を舞台に、二人の“処女”の愛と尊厳を描き上げた吉屋信子の原点というべき小説。現代まで「禁断の書」として秘かに語り継がれた物語の全貌を、今、明らかにする。



花物語 上
吉屋 信子
少女の日の美しい友との想い出、両親を亡くした姉弟を襲った悲劇…花のように可憐な少女たちを繊細に綴った数々の感傷的な物語。世代を超えて乙女に支持され、女学生のバイブルと呼ばれた不朽の名作。

花物語 下
吉屋 信子
女学校中の憧れの的である下級生を思慕する少女、美しく志高い生徒と心通わせる女教師、実の妹に自らのすべてを捧げて尽くした姉…可憐に咲く花のような少女たちの儚い百合物語。

あなたがほしい je te veux
安達 千夏
友人の留美に対する同性愛の欲望を意識しながらも、男友達の小田との肉体関係を愉しむヒロイン・カナ。男とはHできるが、愛せない。女は愛せるが、Hは・・・



ナチュラル・ウーマン
松浦 理英子
女性と女性との恋愛物語。私はこの小説を書いたことを誇りに思う―著者。《定本》映画化決定。’80年代に孤立した輝きを放った女流文学賞作家の畸型的傑作。

蝶の眠り
柳田 有里
雨の歩道橋で深見笙子と出会った沙霧は、彼女の溌剌とした容姿や、輝くような個性の閃きに接するうち、彼女にほのかな恋情をおぼえるようになる・・・

秘密の花園
三浦 しをん
最初から、那由多だけは特別だった。一目惚れや運命の相手なんて信じはしないが、この学校の桜の木の下で彼女に初めて会ったとき、私は悟った・・・



雲南の妻
村田 喜代子
この契りは永遠に…。女が女を娶る。中国雲南の奥深い地で過ごした忘れ得ぬふたりの愛の生活。奇妙な同性婚、傑作長篇小説。

雨の塔
宮木 あや子 
四人の少女たちが織りなす愛と孤独の物語。資産家の娘だけが入れる特別な学校に「捨てられた」四人の少女たち。閉じた空間で生まれる愛情、執着、嫉妬。濃密で危うい感情の行く先は・・・

葬儀の日
松浦 理英子 
葬式に雇われて人前で泣く「泣き屋」とその好敵手「笑い屋」の不吉な〈愛〉を描くデビュー作はじめ3篇を収録。特異な感性と才気漲る筆致と構成によって、今日の松浦文学の原型を余すところなく示す幻の第一作品集。



私立カトレア学園
乙女は花に恋をする
沢城 利穂
乙女の園、私立カトレア学園の入学式。迷子になって泣いていた、ひなを助けてくれたのは『氷のプリンス』大城翼先輩。男子禁制の乙女の花園でひそやかに咲く、乙女たちの甘くて切ないスイート・ラブ。

ワイルドブーケ
花の咲かないこの世界で
駒尾 真子
自由恋愛が禁止され、結婚する相手も国家によって管理される世界。国王の嫁となるべく定められた美貌の姫君デェリアナと姫のお世話をするメイドのジョーゼットとの素敵な恋愛物語。

ワイルドブーケ
想いを綴る花の名は
駒尾 真子
「大好きな人とずっと一緒にいたい」、そのためだけにすべてを捨てて、見知らぬ世界へと旅立った二人の少女ジョーゼットとデェリアナ。その後の2人に降りかかる事件とは・・・。王道百合小説の第2弾!



偽りの姫は騎士と踊る
ダブル・エンゲージ
渡海 奈穂
父王を家臣に殺され、国を追われたディアナ姫。彼女を支えたのは、幼い頃から忠誠を尽くした女騎士・エフィだった。彼女への想いを募らせるディアナだが…素直になれない姫と誠実な女騎士との百合ファンタジー。

あまがみエメンタール
瑞智 士記
全寮制の小中高一貫校、青嵐女学院。外界から完全に隔離された少女たちの園で、ロリータファッションに身を包む少女・橘地莉子は今日も、ルームメイトである渡会心音の肌に歯を立てる。何年にもわたって続く二人だけの秘密の「儀式」…

PUPPY LOVE
鈴本紅:著 ひびき玲音:絵
同級生の知花がかわいくて仕方ない乃々子は、自他共に認める知花オタク。普通じゃない女子高生と普通な女子高生の、ラブコメ。



384,403km―
あなたを月にさらったら
向坂 氷緒:著 玄鉄絢:絵
美由紀は幼稚園以来9年間、理世にずっと片思い。別の小中学校に通う理世とは384,403km―月と地球の距離のように遠いと思っていた。でも・・・

どろぼうの名人
中里 十
私の名前は初雪。もうすぐ15歳になる。美しい古書店店主・川合愛は私を欲しがり、姉は彼女に私を差し出した。川合愛との不思議な生活。飽きられないように、愛し続けられるように。

どろぼうの名人サイドストーリー いたいけな主人
中里 十
私がお仕えする国王陛下は21歳の陸子様。私は陸子さまを愛し、陸子様も、きっと私を愛してくださっている。しかしある日、陸子さまのお側仕えに15歳の美少女緋沙子が登用された…。



君が僕を1
中里 十
昔はどこの商店街にもいたらしい商売繁盛の神様""恵まれさん""が、私の街のショッピングセンターに、復活。今度の"恵まれさん"はなんと中学三年生。気になる…気になる……好きになる?

. (period)
瑠璃 歩月
マフィアへの復讐に燃える女性警官・ビアンカは、警察への復讐に全てをかけるマフィアの手先・ニコラと運命的な出会いを果たす。相容れない者同士が闘いの中で互いを認め、惹かれ合っていく…。

みすてぃっく・あい
一柳 凪
冬休みの女子寮には、4人の美術部員しかいなかった。私たちはひたすらに戯れる―ピクニックをしたり、チェスをしたり、いっしょにお風呂に入ったり。でも2人に告白され、私は選ばなければいけない・・・



ストロベリー・パニック1〜3
公野 櫻子
乙女の聖域に秘められた恋…。シスター・プリンセスの公野櫻子氏が、正統派百合ノベルを華麗に書き下ろし。名門お嬢様学校である聖ミアトル女学園に編入した少女は・・・

クシエルの矢1〜3
ジャクリーン・ケアリー
天使の血をひく人々の国、テールダンジュ。ここでは、愛の営みは神への捧げ物である。少女フェードルは“クシエルの矢”と呼ばれる印をもって生まれ、人には言えない性癖があり、それゆえに数奇な運命をたどる…

蒼穹のカルマ1〜7
橘 公司
空で生き、人を襲う空獣(エア)が住む世界。空獣を狩る機関「蒼穹園騎士団」でカリスマ的人気を集める女騎士・鷹崎駆真。だが世界の平和を守るはずの騎士である彼女には、世界の平和より優先すべきことがあった…
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